アラゴン「頭巾外套と剣の詩」

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 頭巾外套と剣の詩
                    ルイ・アラゴン

台風の騎士たちは 店々の雨戸にひっかかり
まるで雲雀のように 牛乳罐をひっくりかえし
あたりを見まわし 郷愁にひかれるように
床屋の ひげをはやした擬宝珠へ寄っかかりにゆく

  台風の騎士たち 君らは
  その手袋で 何をしてきたのか

手あたりしだい 街々をゆさぶり
家家のあいだを 舞いあがり
舞い降り また高く舞いあがり
釣り床のなかで 息をいれ
風抜き窓で ため息をつく

  台風の騎士たち 君らは
  どこにどこに 手袋をおいてきた

ひとりが遠ざかれば 他のひとりが近づく
彼らは二人通れだ 私はちゃんと見たのだ
遠ざかったのは 聖(サン)セバスチアン
近づいてきたのは ひとりの異教徒

  台風の騎士たち
  なんと 君らは くわせもの

聖セバスチアンは 突きささった矢を引き抜く
異教徒は それを拾い集めて 舐(な)める
聖セバスチアンは 手首に時計をしている
三時十分である

  台風の騎士たち 君らはどこに
  どこにどこに 手袋をおいてきたのか

煙突のなかで フーフー
いまや 三時十一分
もうずっと前から 地下鉄(メトロ)もない
穴倉の中へ 君らは何を探しにゆくのか 

   台風の騎士たち 君らは
   手袋を失(な)くしてしまったんだろう?

ここにわしはネクタイを置いといたんだ と
聖セバスチアンが わたしに答える
異教徒は 異教徒は なにも言わない
ネクタイもわたしの約束も忘れてしまったらしい

  台風の騎士たち
  手袋は 下水へ流れちゃった

ひとりは 現在を見つめ
ひとりは 耳のなかの思い出をきく
ひとりは飛び去り ひとりは死ぬ
夜が明けそめて 彼らの脚(あし)を指し示す

  台風の騎士たち
  とてつもない騎士たち
                    (『永久運動』)

(『アラゴン詩集』──”初期詩篇” 飯塚書店 1969年)

*譯註──「頭巾外套と剣」は武勇、侠勇をも意味するから、ここでは武勇詩というほどの意味にもなろう。(三笠書房『現代世界詩選』)

アラゴン


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