ランボオ「夕べの祈り」

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夕べの祈り


  (『ランボオ詩集』蒼樹社 昭和23年)

ワイン


 夕べの祈り

おれは座っていた、床屋の手にかかった天使のように、
彫(ほ)りすじの深いコップを手につかみ、
下腹つきだし、首をそらせ、口にはパイプ、
うすい帆布(ほぬの)のはためくような、荒れ模様の空の下。

まるで古い鳩小屋にたまった、温かい糞(ふん)のように、
おれの胸には、甘い「夢」がむらがり燃える、
そうしてしばしおれの心は、さながら火に溶(とろ)けてくすんだ金を
流し込んで、赤く染まった白木の鋳型。
さて、おれは念入りに、おれの夢を飲みほすと、
もう三四十杯もかたむけたので、やおら身體(からだ)をねじまげて、
ひどくたまった小便を、ぶっぱなそうと考える。

杉や排香草(ヒソプ)*にかこまれたキリストのようにやさしく、
おれはほの暗い空に向かってぶっぱなす、いと高く、いと遠く
──背の高い向日葵草に失禮して。

*排香草(ヒソプ)──ユダヤ人は儀式のとき、ヒソプの枝を祓いに用いたという(訳者註)
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