わたしが詩だと思って

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私が詩だと思って


  (『狼煙』9号、詩集『老いたるオルフェの歌』あとがき)


国会
わたしが詩だと思って……
   詩のかたちによる詩論の試み


わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしもひとの眼や耳にひびきとどくような
ひとつのひらめきもひびきもそこにないなら

わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしもひとの心に共鳴りを呼び起こすような
ひとつの叫びも呼びかけもそこにないなら

わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしも詩を生みだすひとつのイメージもなく
夢もなく現実のひとかけらもそこにないなら

わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしもひとの窓にとどくひとつの光もなく
ひとを酔わせる酒の一滴もそこにないなら

わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしもひとつの深淵も真実もそこになく
胸の高鳴りも羽搏きのひとつもそこにないなら

どうしてそれをも詩と呼ぶことができよう
それはとるに足らないがらくたにすぎない
そのときわたしは詩人ではなかったのだ

わたしは芸術のための芸術の立場に立って
このことを言ったり考えたりはしていない
わたしは人生のため万人(みんな)のための詩を考える

わたしもまた政治詩をもいくつか試みてきた
その政治詩もまた詩的感動をとおしてしか
その政治的メッセージを伝ええないであろう

わたしが詩だと思って書いたもののなかに
もしも嵐に鳴る森の木の葉のざわめきもなく
戦争を憎み怒る人びとの声のこだまもないなら

歴史をつくる人たちの足音のひとつもなく
もしもそこに一行の詩さえもないのなら
どうしてそれをも詩と呼ぶことができよう

そのときわたしは詩人ではなかったのだ
          一九九二年八月
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