ルヴェルディ「つれない心」

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つれない心



(『三笠版 現代世界詩選』)

雨のバラ

 つれない心
            ピエール・ルヴェルディー

おまえの悲しげな顔を
おれはもう二度と見たいとは思わぬだろう
落ちくぼんだ おまえの頬を
風に吹かれる おまえの髪を
おれは 野を越えて 出発した
あの 湿っぼい森のしたを
ひるも よるも
太陽のしたを ふる雨のなかを
おれの足もとで 落葉が音をたてた
ときおり 月がかがやいた

ところが おまえとおれは またぱったり出會ってしまい      
おれたちは ひと言(こと)も言わずに じろじろと見つめあった                    
それにおれには もう一度出かけてゆくほどの場所もなかった

一本の木に背なかをよせかけたまま
おれは永いことじっと立っていた
おれのまえには 恐ろしいおまえの愛があり
悪夢のなかよりも おれは胸ぐるしかった
とうとう おまえよりも力づよい誰かが おれを解きはなしてくれた
泣きぬれた眼ざしが おれのあとを追ってくる
こんな弱さとは 誰もたたかえるものではない
おれは急いで逃げる 意地悪(いじわる)の方へ
二つの拳を 武器のようにかざす 強さの方へ
その爪で おれをおまえのやさしさから ひき離した怪物のうえを
あまく抱きしめる おまえのやわらかい腕から遠く
胸いっぱい息はずませながら おれは出かけてゆく
野をよぎり 森を抜け
おれの心臓が休まる 不可思議な町のほうへ
                      (大島博光譯)
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