ネルーダ「ほとんど空のはずれ……」

ここでは、「ネルーダ「ほとんど空のはずれ……」」 に関する記事を紹介しています。
11 ほとんど空のはずれ……

ほとんど空のはずれ 二つの山のあいだに
三日月が 懸っている
めぐり 移ろう夜よ
沼のなかの 星屑をかぞえるものよ

彼女は おれの眉毛の間の喪の十字架だ 彼女は逃げる
眼に見えぬ闘いを秘めた夜よ 青い金属を鍛えるがいい
おれの心臓を廻せ それは狂ったハンドルだ
遠くから はるか遠くからやってくる娘よ
その眼(まな)ざしは ときに空を走る稲妻のようだ
その狂おしい情熱の中に渦巻く嵐と 絶えざる嘆きよ
とどまることなく おれの心の上を吹き去れ
おお 埋葬の風よ ぶち壊し 散らかし 持ちさるがいい おまえの鎮まった根を
彼女のもうひとつの脇から 大樹を根こそぎにするがいい
おまえ 穂よ 煙りのたぐいよ 明るい娘よ
おまえは 風と ひかり輝いた木の葉から生れた娘だ
夜の山のかなたの 火事のように燃える白い百合だ
ああ おれには.どうにもうまく言うことができぬ
彼女は すべてのもので できていたのだ
おれの心をまっぷたつにする 不安のヒ首(あいくち)よ
いまは 彼女の微笑みのない道を とぼとぼと歩いてゆく時だ
嵐よ 鐘楼の墓掘人よ 新たに吹きつのる暴風よ
いまになっても なぜ彼女にかかずらうのか
なぜ 彼女を悲しませるのか
ああ すべてから遠のく道をゆくことだ
死も冬も苦しみも この道をふさぎはしなかろう
露のなかに眼をひらいて

(角川文庫『ネルーダ詩集』──「二〇の愛の詩と一つの絶望の歌」)

バラ色


関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2692-8994c3ed
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック