ネルーダ「おまえが聞いてくれるようにと」

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5 おまえが聞いてくれるようにと

おまえが聞いてくれるようにと
ときおり おれの言葉は
か細くなる
砂のうえの 鷗(かもめ)の足跡のように

ぶどうの実のようにこころよい おまえの手には
首飾りを 酔いほうけた鈴を

だがおれの言葉はもう 遠くに見える
それはもう おれよりは おまえのものだ
それは おれの苦悩(くるしみ)の上を
蔦(つた)のように這いのぼってきたのだ
まるで 湿った壁を這いのぼるように
この血みどろの遊びでは おまえこそが罪人なのだ

おれの言葉は おれの暗い巣穴から逃げ出そうとする
おまえはそのすべてを満たし すべてはおまえに満たされるのだ

おまえのつくりだした空虚(うつろ)さを
おまえより先に おれの言葉が 埋めた
そして おまえよりも おれの言葉のほうが
おれの悲しみを よく知っているのだ

それは おれの言いたいことを 言ってくれるのだから
おまえに聞かせたい思いのたけを 聞いておくれ
苦悩の風が 言葉をひきずって吹いてくると
いつも 夢の嵐が それを吹き散らしてしまう

おれの悶える声の中に おまえはほかの声を聞く
むかしのひとたちの 古い泣きごとを
血のような むかしながらの愛の懇願(ねがい)を
恋びとよ おれを見捨てずに 愛しでおくれ
苦悩(くるしみ)の波のうえを おれについてきておくれ

おれの言葉は おまえの愛の色に染まっている
おまえは すべてを占領しているのだ

これらすべての言葉で おれは果てしない首飾りをつくった
ぶどうの実のようにこころよい おまえの白い手のために

(角川文庫『ネルーダ詩集』──「二〇の愛の詩と一つの絶望の歌」)

アンジェラ
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