おまえの眼は

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 おまえの眼は
               大島博光

わたしは みずから鞭うち 問いただす
雨あがりの 山ひだのように くっきりと
わたしの うちとそとを 見つめるために
そうして見たものを よりよくうたうために
わたしは みずから鞭うち 問いただす

おまえの眼は まだまだ くもっていないか
みずからは 澄んだひとみを みひらいて
美と真実を みつめてると 信じながら
いろいろの いろめがねに くらんでいて
おまえの眼は まだまだ くもっていないか

祖国の ひろい地平線を 見わすれていないか
せまいところ かたよった窪地に眼をとられて
よそぐにに 手あし首ねを しばられようとも
ゆたかな 大地のうねりで ひらけている
祖国の ひろい地平線を 見わすれていないか

深みの力と 典型を みおとしていないか
石ころや 行きずりのものを なでまわして
森のなか 士のなかに 芽ぶいているものを
せりあがる ぼた山のかげに息ぶいてるものを
深みの力と 典型を みおとしていないか

人間の偉大さを うたいわすれていないか
とり残された がらくたばかりに とらわれて
人間の弱さ ちいささばかりに 眼をつけて
立ちあらわれている あたらしい英雄たちを
入間の偉大さを うたいわすれていないか

ゆたかに 夢みるすべを みうしなっていないか
プロコフィエフの 七番めの交響曲のように
夢のなかからのように ひびいてくるものを
ひとに光りをあたえ ふるいたたせるものを
ゆたかに 夢みるすべを みうしなっていないか

うたの魅力と みずみずしさで とらえているか
おまえのうちを 水のように流れているものを
雲まの太陽のように 鳥影のように映るものを
そうして せききって こみあげてくるものを
うたの魅力と みずみずしさで とらえているか

まなうらに見えるほどに よみとっているか
ふるさとの 杭をうちこまれた くろ士のうえに
ひとびとが たたかい ながした血のいろを
こめかみを鳴らしながら 流した涙のいろを
まなうらに見えるほどに よみとっているか

硝煙くさい風や雲を うたい告げているか
祖国の山はだに オネスト・ジョンがうちこまれ
ふるさとの空に 水爆がふりかざされているとき
嵐をまえぶれて 鳴きさけぶ ひわほどにも
硝煙くさい 風や雲を うたい告げているか

平和と春を ふかく よびもとめているか
きのこ雲に灼かれたひとの いたみとねがいで
もう子どもたちを 原子の炎でころさせぬ
こいびとたちが なが生きできるようにと
平和と春を ふかく よびもとめているか

しらべゆたかに おまえは歌いあげているか
おまえの眼を ふるえるくちびるに つないで
草むらにかくれた きよらかな小川のように
ひとびとの 胸から胸ヘと ながれているものを
しらべゆたかに おまえは歌いあげているか

握りあった手のひらのぬくみを つたえているか
おまえの詩のなかの「わたし」が おまえの
脈うつ血のいろと たかなりをもちながら
ひとびとにひびきあい つながり むすびつき
握りあった手のひらのぬくみを つたえているか

おまえはこたえるだけの優しさを たたえているか
木枯しのなかで 笑いさざめく 子どもたちと
おまえのしあわせと 新しい日々をつくりだし
苦しみたたかいながら おまえを愛しているひとに
おまえはこたえるだけの優しさを たたえているか

たたかいのなか ふかく ふみこんでいるか
夜の稲妻のように くらやみをひきさいて
くらやみの くらいふところを 照しだし
えぐりとった おまえのうたを たずさえて
たたかいのなか ふかく ふみこんでいるか

そうして 党にさしだすにたる詩をめざしているか
労働者階級の 党の詩人のひとりにふさわしく
マヤコフスキーのように アラゴンのように
党が 高くかかげた光りと方法にみちびかれて
そうして 党にさしだすにたる詩をめざしているか

(『現代詩』1956年2月号)

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