島田利夫「歌い出せ一番鶏よ」

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  歌い出せ一番鶏よ  -1951.1.1-
                           島田利夫

 干ききらぬ涙の上に
 いく度、新しい涙が流れ
 又、消えたろう
 陳情書は放り出された
 嘆願書は色あせた
   そこの役所のデスクの側(わき)に
   ここの役所の紙屑箱に

 生命を覆う一枚の上衣すらも
   引き裂かれた
   ──大臣の言葉の中で

 だが 引き裂かれぬ
 憎しみの河よ
 それは今、生きて泡だつ
  あなたの胸に
 それは今、生きて逆まく
  私の言葉に
 その中で 色あせぬ
  引き裂かれた一九五〇年よ
  涙の年よ

      ×     ×

 この都市には、数万の人が住んでいる
  同じ日を働き
  同じ夜を眠る
 数万の人が住んでいる

 明日を歌う夕焼けは 燃えたたぬ
  ここの空には、けれどなお
 家々に 窓はひらき
 生活に 言葉はひびき──

 人々は抱えて運ぶ
 今日から明日へ──重い心を
 悲しみは いよいよ重く
  一人は よろめき
  一人は 倒れる

 この都市には 数万の
  同じ悲しみが住んでいる
  同じ日を働き
  同じ夜を眠る
 数万の 同じ憎しみが住んでいる

 だが俺達は知らずにいた
   凡ての窓 凡ての言葉の 望む願いを
 だが俺達は知らずにいた
 数万の憎しみをつなぐことを

 おお俺達は見た
 俺達の喜びが 一台の国税庁のトラックに
 山積みされて奪われた日を

 そのあとを追う眼の方角で
 見ろ 憎しみは結ばれている

 俺達を呼ぶ
 あなたを呼ぶ
 切り離された憎しみの呼び合う声が
 あなたの中で
 わたしの中で
 あなたを呼ぶ
 俺達を呼ぶ
  労働の日に
  眠りの夜に

      ×     ×

 歌い出せ一番鶏よ!
 一九五〇年の黒い裂け目で
 俺達は引き出すだろう
 燃え立つ五一年を

 歌い出せ一番鶏よ!
 それに続け 二番鶏よ!
  涙の歌は もう沢山だ
  夜の歌は もう沢山だ

 風は荒れ 風は呼ぶ
 夜の中の数知れぬ朝の笛よ!
 炎のような歌い手よ!
 風は荒れ 風は呼ぶ
 お前の中の憎しみを!
 お前の中の朝焼けを!

 (『花』復刊一号 1951年3月)

労働

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