島田利夫「挨の中の童話(メルヘン)だ」

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挨の中の童話(メルヘン)だ
                           島田利夫
 
柵のやうに腕を触れ
分割される地面の上で
ほんとになんにも知りやしない
 (確かにあれは叫びだが)

夕焼けは失くしてしまった
表情もおまけにつけて
泥溝(ドブ)板に鼠がさはぐ
月が上る? 冗談ぢゃない今は昼

だが
今 明るいメルヘンよ
別々な顔の同じ表情の
吹きつさらしのメルヘンよ

もたれるスコップ
堆積された石炭殻
顎を投げ出し
遠くで見れば思案顔だが
実は何んにも……。

疲れだ
チラチラ燃えるかげろふの隙間から
遠く遠く市街が見える
     
     蝿(ハエ)のやうにネクタイした紳士
     乙にすまして………
    
水鼻汁(ミズツパナ)
遠くで見れば思案顔

「俺が思ふのは恋の事
真似ぢやない……日に灼けた
誓っていい……小麦粉色の
少女だ。泥だらけの腕がいやなら
瀝青土(チャン)にまみれた 命だつて
やらうと云った
ほんと云ったさ 返事はちやんと胸の中

君らは賢い 俺の恋なぞわかるまい
こそ犬め 白い手の
ああ マリヤ
十字架が避雷針に似てゐます。」

風、挨 何も見えない
均(す)らされる地面の上で
いかさま賭博のサイコロのやうに
すりかへられる地面の上で
肩を寄せ 井戸のやうに腕をつなぎ
 (あれは確かに叫びだが)
みんな吹き消せ
石炭殻の山 顔々 埋まってゆく脚

(『ラッパ』1948.11)

ラッパ
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