「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」を観て

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「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」を観て   矢向忠雄

 1987年(昭和62年)香港。返還十年前に作られた。レスリー・チェーン(私は、彼がジャッキー・チェーンだと思いましたが、別人でした)主演の、カンフーの殺陣と、「おとぼけ」が面白い映画で、後に、日本で流行ったカンフー映画の、初期の作品だと思います。

 物語は、彼が古寺で出会い、好きになった女性(実は幽霊)を助けるため、ある道士と力を合わせ、魔王と戦い、彼を倒し、女性を成仏させると言う話です。空中を飛びまわるカンフーアクション、憂いを帯びた歌声(歌っているのは、テレサ・テンだと思うが、不明)が印象的です。では何故この映画がヒットしたのか、考えて見たいと思います。理由はいくつかあると思いますが、一つはこの映画の背景思想が、日本人の思想の根源である、仏教だからだと思います。例えば力を合わせる道士は、道教の指導者でしょう。でも彼の持っている刀は、不動明王の持っているものと同じ形です。中国人なら青竜刀でしょうに。道士は掌に「呪」と書き、「般若波羅蜜」と叫んで投げ、敵に打撃を与えます。「呪」は「しゅ」と読み、これを長く文章化したものを「真言」と言い、要するに呪文です。「摩詞般若波羅蜜多心経」の最期に出てくる 「ギャーテー・ギャーテー・ハーラーギャーテー・ハーラソーギャーテー・ボージーソワカー」 が、真言つまり呪文に当たります。「般若」とは、仏の知恵を言います。「波羅蜜」とは「六波羅蜜」とも言い、理想を実現させるための六つの修行布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧を言います。道士が彼に、自分を守るために持っているように言うのは、仏教のお経の一部です。それが力を発揮します。女性を成仏させるため、彼女のお骨を埋葬します。舎利信仰は、仏教の根元思想です。以上は全て仏教思想から来たものです。だから観ていて、何の違和感も感じないのです。私も敬けんとは言わないが、仏教徒ですから。

 面白いのは、化け物が出て来るのですが、日の光に当たると溶けてしまいます。これってドラキュラと同じですね。唯一仏教的でない点です。でも、死して土に帰ると言うのは、仏教的と言えると思います。

 最後に、この映画は、「幽霊との愛を成就する」がテーマです。つまり異種間結婚です。日本にはこの手の話は枚挙に暇がありません。例えば、遠野には、愛馬と結婚する娘の話があります。雪女と結婚して、子供を作った話。羽衣を隠して、天女を嫁にした話。助けた鶴が作った布を売る亭主。阿部晴明の父は人間、母は狐。父を助けた犬と結婚した姫の話は、里見八犬伝でしたね。これ等の思想は、仏教の六道輪廻から来ていると思います。人間は死ぬと、六つの世界を、生き変わり死に変わりしながら、虫になったり動物になったりすると言うのが、その思想の中心です。江戸時代、白隠禅師の話に、自分を刺している蚊をつぶしながら、「亡くなった父は今どこにどうしているのか」と聞いた侍に、「今つぶした蚊が、お前の父の生まれ変わりだ」と答えています。生まれた子を、「亡くなったおじいさんの生まれ変わりだ」など言ったりもします。つまりこの世に生きている者(動物も含めて、衆生と言います)は、皆平等で、区別差別はないのです。だから人間が、それ以外の物と結婚するのは、決して不自然でも、間違いでもないのです。これも仏教思想から来ていると思います。
 映画を、製作の背景思想から考えるのも、楽しむ方法として、面白いと思います。いい勉強ができました。館長さんに感謝します

チャイニーズ

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