島田利夫「ふるさとの川の岸べに」

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   ふるさとの川の岸べに
                         島田利夫

  ふるさとの川の岸べに
  輝くものは涙の露
  色紅く 花咲くものは裂けた心
  言葉低く われらの月日は重く流れる
  ふるさとの川の岸べに

  言葉低く
  起き伏すわれらの生命(いのち)のように
  この岸べに 起き伏すものは えのころ草(ぐさ)
  だが 一群(ひとむれ)の葉ずれの節(ふし)にも
  われらの愛の誇りはひびく

  われらの愛の誇りはひびく
  苦悩のあとには喜びがくると──
  歌いつたえ 起き伏すものは えのころ草(ぐさ)
  聞きつたえ ささやきつたえ
  起き伏すものは われらの生命(いのち)

  苦悩のあとには喜びがくると
  俯向いたまつ毛の蔭の瞳のように
  われらの愛は身をひそめても
  ふるさとの川の岸べよ なお歌え
  〝自由″の名の売国奴が 死の自由を撒き散らそうと

  ひそめた愛の大きさに裂けた胸から
  流れ出る その誇りを
  夜ごと 夜ごと
  祖国の風はお前に運ぶ
  ふるさとの川の流れよ

  その岸べに 輝くものは涙の露
  色紅く花咲くものは裂けた心
  そしてああ お前は鳴らす その誇りを
  草笛を えのころ草(ぐさ)を
  田植歌に 糸繰り歌に ひびきは遠く混り入る

  歌ってくれ 歌ってくれ
  愛は死よりも強いのだと
  かきたててくれ われらの燠火(おきび)を
  ともしてくれ 油の沁みたわれらの心に
  火を 火を 火を、祖国の火を
                1951.4.12

      (『日本ヒューマニズム詩集 一九五二年度』)

千曲川


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