わたしもきのうは若者だった

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 わたしもきのうは若者だった
                                    大島博光

わたしもきのうは 若者だった
暗い暗い 夜の時代だった
暗い酒場で わたしはうたった
  酔いがなければ 生きられない
  夢なしには 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
侵略があった 戦争があった
明日もない闇のなかでつぶやいた
  火の下では 生きられない
  鉄の下では 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
眼に眼かくし 口に猿ぐつわ
燈火管制の闇に口ごもった
  重石の下では 生きられない
  自由がなければ 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
ヒロシマに 原爆が落された
キャラバンのなかで わたしも歌った
 青空がなければ 生きられない
 平和がなければ 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
なんの目的(あて)もなく ぶらついた
暗い眼をして わたしは 呻いた
  生き甲斐なしには 生きられない
  希望なしには 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
わたしも 恋びとにめぐり会った
そしてきみに そっと告げた
  愛なしには 生きられない
  きみなしには 生きられない

わたしもきのうは 若者だった
夜をぬけでて 光をもとめた
みんなと腕を組んで 歌った
  太陽がなければ 生きられない
  明日がなければ 生きられない

(『稜線』59号 1996年2月、『稜線詩集』1997年)

稜線詩集

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