竹内てるよ「新世紀を主宰するについて」

ここでは、「竹内てるよ「新世紀を主宰するについて」」 に関する記事を紹介しています。
 新世紀を主宰するについて
                           竹内てるよ

 待て、然して希望せよ、と云はれたのは、アレキサンドル・ジュマであつたでせうか。
 若い人々が、その切實なる愛と希ひとをかけて、守つてゆく詩誌に、編輯や、主筆として要望されたことも、既に、いく十度かございました。併し、一つにはプラン、二つは健康、三つには理想、それが内に充實するまではと、御申し越しのすべてを、今日まで御辞退して居た私でした。
 待て、然して希望せよ、その言葉のとほりよしんば、何ほどの成長が私に無からうとも胸に、三つのものへの火の燃えるを信じられたる今となつて、新世紀の編輯責任者、服部晃二郎兄の、仕事への情熱に泣いて、私は、よろこんで、御引受けいたすことになりました。初めての仕事で、嬉しうございます。謹んで、みなさまに、不肖、何程のお役に立つかは判りませんが、たゞ、万全をつくして事にあたるといふ、その誠意一つをもつて、御あいさつ申上げます。
 「新世紀」同人は、一つの家族とひとしく、友愛と、燃ゆる藝術への熱意をもつて、きわめて平等に、静かに、たのしく、各自の作品、責任、事務に、精進いたしませう。
 どうぞ、皆さんの御批判、御叱聲、御指導を、御待ちいたします。
 「新世紀」の私達は、素直に、まつすぐに、人として、作品の成長に、努力いたしませう。おもねず、へつらはず、自分等の最上をつくして、よいものを、心を込めたものを、發表いたしますと、同時に、「新世紀」を支持し、愛して下さる方は、みんな兄弟として、深く、永久なる御つき合ひをいたしたく存じます。
 「新世紀」の私たちは、愛と、希望とを以つて、つよく、ほがらかに、生きてゆきます。藝術に!そして、友情に、人生に。その心に、感受する、すべての悲しみをも、悦びをも愛して、まっすぐに生きて行きます。廣くなくとも深く、にぎやかでなくとも、美しく。
 筆で、萬言の理想を述べませうより、長く静かに、作品の上に、成長してゆきたく存じます。個々の熱意と、精進とをもって、謙譲に、立派に、私達は、勉強いたしませう。
 そして、それが私達のプランであり、仕事であり、悦びでもあります。
 待て、然して、希望せよ、
 希望するならばいつの日か、その實現をも期すべきではないでせうか。
 今日から私の、かけがへのない、いとし子「新世紀」今日から同人諸氏の唯一のもの、そして今日から詩壇へ、私達のおくる、一輪の花よ。咲くならば、雨にも、風にも、傷かずいたまず、見事に、立派であれ。
(『新世紀』第二輯 昭和10年4月5日発行)

新世紀
新世紀もくじ
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2440-71387fb2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック