大野英子さんにインタビュー(4)兄の失踪

ここでは、「大野英子さんにインタビュー(4)兄の失踪」 に関する記事を紹介しています。
(4)兄の失踪

 昭和十年九月十六日、兄ちゃんは突然姿を消しました。帰ってこない兄ちゃんを待っている家にのし込んできたのは六人の兵隊さんでした。
 一列に並び土足で踏み込んだこわい兵(特高? 小学生の私には分かりませんでした)は終始無言で家中荒らすだけ荒らし、兄ちゃんの小さい本箱を蹴り倒すと、黙りこくって一列で出て行きました。
・・・
 兄ちゃんのいない家を引き払って、私らは父の住むもっと貧しい山寺に帰りました。
 昔のこと、何日もかかって兄ちゃんの送った荷物が届きました。父ちゃんは「これは容易ならぬもの」と、竹やぶの陰に穴を掘り、すべてを焼き払い、深く埋めて草でおおいました。
 それが何であったか、すべてをさっしていながら父は死ぬまで一言も話して呉れませんでした。物言えぬ時代でした。

 容易ならぬものよと父が二日かけ焼きにし灰は黙し語らず

 特高が探しに来たのはこれだったのでしょうか。
(『続・九十歳のつぶやき』──兄ちゃんのこと)

 特高は黒い軍服姿で兵隊のようでした。家中探しまわったあげく、兄の部屋の小さな本箱を蹴飛ばして、何も言わずに帰って行きました。
 失踪して数日後、兄が頼りにしていた緑川昇さんに姉が会いに行きました。小学生の身で住所を頼りに訪ねたのです。「アンちゃんいなくなったけど、知らないか」と聞いたら、「決行したか!」と頭を抱えてうずくまり絶句。それ以上聞けませんでした。『新世紀』を届けてくれたのは緑川さんです。計画はみんな知っていたのでしょう。


*戦後、竹内てるよさんから真相が告げられます。治安維持法により捕らえられ、拷問のすえ殺されるよりは、と『新世紀』の仲間12人が集団自殺したのでした。
(つづく)

なでしこ
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2428-991d276d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック