アラゴン──モロッコ戦争・入党(2)モロッコ戦争とシュールレアリスト

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<モロッコ戦争とシュールレアリスト>

 一九二四年の春、モロッコのリフに燃えあがった民族独立闘争を鎮圧するために、フランス軍は以前のスペイン領に侵入する。一九二五年四月、アブト・エル・クリムに指導されたモロッコの諸部族はリフにおいて攻勢に転じる。一九二五年七月、フランスとスペインの植民地主義者は同盟をむすんで、独立運動に立ち上ったモロッコ軍に攻撃を加える。
 モロッコで始まったこの帝国主義戦争は、フランスの労働者階級をはじめ、広範な知識人をまきこんで、戦争反対の運動を呼びさまさずにはおかなかった。
 階級関係の緊張、植民地人民と植民地主義者との矛盾の激化、経済的危機とフランの低落、こういう情勢は、第一次大戦後の相対的安定の時期には取るに足らぬものと見えた文学的反抗に新しい意味を与えることになる。
 「……リフ戦争はわたしとわたしの友人たちにたいして、大きな衝撃と分裂を与えた。わが国のブルジョアジーが口には平和をとなえながら、自己の独立のために闘うモロッコ人を組織的に虐殺しようと企てたとき、アカデミー会員たちの支持によってわれわれ自身の国から戦争が開始されるのを見たとき、それはわれわれにとって青天の霹靂(へきれき)あり、わたしにとっては人生における分岐点となった」(『社会主義レアリスムのために』)
 「祖国の側に立つ知識人」という声明のなかで、多くの保守的な文学者が戦争支持の立場を表明した。しかしシュールレアリスト・グループは戦争に反対する。こうして「クラルテ」の共産党員知識人たちを中心に、シュールレアリスト・グループと、「哲学」誌の知識人グループ(ポリッツェル、ルフェーブル)などのあいだで、戦争反対の協力が成立し、共同声明を発表する。この声明は、シュールレアリストたちが決定的な段階を越えたことを意味するもので、彼らは新しい同盟者たちとともに宣言する。
 「われわれは空想的社会主義者ではない。われわれはこの革命をその社会的形態においてのみ理解する……」
 つまり、ブルジョアジーの権力のプロレタリアートへの移行として理解するというものである。革命は形而上学的な問題ではないということである。哲学の領域でいえば、それは観念論から弁証法的唯物論への移行を意味する。
 しかし、アラゴンのなかには矛盾と混乱がまだ残る。「クラルテ」の組織したモロッコ戦争についてアンケートに答えて、アラゴンはためらうことなく声明する。
 「こんにちモロッコを舞台として、フランス政府と帝国主義的企業とがくりひろげている偽善にたいしてわたしは憤慨する。戦争を正当化するあらゆる考えは、そのことによって非難される」
 それと同時に、植民地戦争に反対する「クラルテ」の諸原則にたいして、アラゴンは異議を申したてる。
 「諸君が、独立、民族の主権、民族自決権など、民族的言語によるいくつかの表現を用いたことを、わたしが非難することを許してもらいたい」
 このように彼はまだ、現実の歴史とは無縁な抽象的な観点にとらわれていて、植民地政策をとる国家の民族主義と、圧制に苦しむ民族の解放闘争との区別がつかない。
(つづく)

(新日本新書『アラゴン』)

モロッコ
成美堂出版「世界地図」より。リフ地方(Rif)はモロッコ北部の山岳地帯で、テトゥアンが主要都市となる。

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