だれもわたしの歌を聞いてくれない

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だれもわたしの歌を聞いてくれない
                                大島博光

だれもわたしの歌を聞いてくれない
枯枝が風になおもきしみ鳴るように
夜のさなかにも太陽を歌っているのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
雪のなかに焚火を吹き起こすように
冬のさなかにも春を歌っているのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
ひびきあう鈴をつらねるようにして
心の底から心のたけを歌っているのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
風のなかの炎のように燃えた愛を
わたしの恋びとを歌った愛の歌を

だれもわたしの歌を聞いてくれない
死とたたかい死にうち勝つ愛の歌を
柩を叩いてわたしが歌っているのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
風も凍る氷の山でわたしは歌っている
冬空に消えてゆくわたしの白鳥の歌を

だれもわたしの叫びを聞いてくれない
海で溺れようとする子供たちを助けようと
絶望から希望を救おうと叫んでいるのに

だれもわたしの呻きを聞いてくれない
それは明日の日のあなたの呻きなのに
わたしだけひとりの悲劇ではないのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
枯枝が風になおもきしみ鳴るように
夜のさなかにも太陽を歌っているのに

だれもわたしの歌を聞いてくれない
臓腑をさらけてわたしが歌っているのに
自分の傷ぐちあやまち狂い血の色を

だれもわたしの叫びを聞いてくれない
くだを巻く酔いどれのようにわたしが
わたしの臓腑を吐き出しているのに

わたしの叫びをだれも聞いてくれない
死刑囚のまなざしを叫んでいるのに
牢獄の窓から見るひときれの青空を

わたしの叫びをだれも聞いてくれない
ニセの神 狼が人間を喰い殺すのだと
わたしが狂わんばかりに叫んでいるのに

わたしの歌をだれも聞いてくれない
穴倉のなかでも虹を歌っているのに
森のなかの井戸の底に映った青空を
                    一九九三年五月

(詩集『老いたるオルフェの歌』)

浅間山

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