ひき裂かれた恋びとたち(上)

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 ひき裂かれた恋びとたち

 一九三九年十二月に書かれた「ひき裂かれた恋びとたち」は、詩誌『鉄かぶとをかぶった詩人たち』(P・C・40)の第2号に掲載された。この詩誌はやはり動員されて入隊していた詩人ピエル・セゲールスが隊内から出していたものである。この詩を受けとったときの感動をセゲールスは『レジスタンスとその詩人たち』のなかに書いている。
 「わたしはアラゴンには一度も会ったこともないし、文通をしたこともなかった……一九三九年十二月二十五日、忘れもしないクリスマスの日、わたしは、青いインキでかかれた二ページの《ひき裂かれた恋びとたち》の原稿をうけとった。わたしはさっそくこの詩を『P・C・40』(一九四〇年一月発行第二号)に掲載した。

 駅で つんぼ盲(めくら)の人たちが その暗い心の叫びを
 悲壮な身ぶり手ぶりで 話し合うように
 ひき裂かれた恋びとたちも狂おしい仕草をする
 冬と武器との 白じらとした静けさのなかで
 ……

 おお 野のロメオたち もう うぐいすも
 雲雀(ひばり)もいないのだ 地獄と化した空のなかには

 木木も 人間たちも 家家の壁も 灰色だ
 くすんだ歌のように 思い出のように 灰色だ
 それがみんな ぐらぐら揺れて 動いたのだ
 あたりいちめん 雪に蔽われた 世界のなかに
 死ぬほどにも 悲しい 手紙の ついたとき
 だが 死ぬほどにも悲しい 手紙のなかにも
 愛はやはり アルペジオを 見いだすのだ
 ……

 だが きみを かぎりなく愛する この心臓に
 赤い血の脈うつかぎり わたしはきみのために歌おう
 そのリフレーンが つまらぬ歌と見えようが
 この月並みで すり切れた心のつぶやいた言葉が
 いつか すばらしい世界の 前ぶれとなるだろう
 そのとき きみひとりは 知ってくれよう
 太陽がかがやき 愛が身を顛わせているかぎり
 秋のさなかに 春を信じて なぜ悪かろうと
 わたしは 人間として歌いつづけよう つまらぬ歌を


 おお! 歌、歌の躍動、息吹き、うねり、記憶にきざみこまれる抑揚、魅惑!……この詩はわたしには希望であり慰めであり、ついにわたしの詩的欲求に答えてくれた内面的なカンタータであり、わたしの愛誦する詩となり、わたしをさらに遠くへ押しやってくれたのである。」(白石書店『レジスタンス詩人たち』)
(つづく)

新日本新書『アラゴン』──もし もう一度行けとなら>

*「ひき裂かれた恋びとたち

エルザ1945
エルザ 1945年


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