パリは飢える(下)「占領されたパリ」

ここでは、「パリは飢える(下)「占領されたパリ」」 に関する記事を紹介しています。
 また、『ユマニテ』紙の文芸部長であった詩人アンドレ・シェンヌヴィエールもつぎのような詩を書いている。

  占領されたパリ
                    アンドレ・シェンヌヴィエール


 人影もなく悲しげで
 足音ばかりがひびく街通り
 ぼんやりと霞んだ夢のように
 遠い 新しい地平線が見える街通り
 剥げ落ちた壁には 癩(らい)のように
 色とりどりの大きな痣(あざ)がひろがり
 並んだ店店(みせみせ)は
 からっぽの貝殻のようだ
 顔のやつれた 暗欝な群衆
 飢えをみたそうと血眼になっている群衆
 窮乏の重みにうちひしがれたように
 まるく肩をおとした群衆
 失った思い出と悔恨にひたる
 悦びのない群衆

 死んだような 汚れた都市(まち)
 鉄槌(かなづち)をうちおろすような長靴の音が
 舗道の沈黙をつん裂く
 毒の色 死の色 鉛の色をした軍服
 ひと殺しの匂い 湿った藁の匂い
 虚偽にいつわりの匂いが ただよう
 街燈が青くまたたく 不気味な夜夜
 ひと殺しの白刃が冷たく不吉にひらめく

 パリは静まりかえり パリはじっと待つ
 言いなりになる娘としてでなく
 拒絶する首都(まち)として
 その不気味な沈黙は
 けっして眠り込んでいるのではない
 パン粉をふくらませる酵母のように
 眼に見えぬ ほかの人びとが働いている
 これを最後にと血の流れた
 不幸な日日の仮面のかげで
 パリはじっと待ち
 パリはじっと怒りをこらえている

 しかしこの詩人じしんも、一九四四年五月、パリ東駅の前でドイツ兵の銃弾に倒れた。フランスの国旗を意味する三色の腕章を巻いていたというだけの理由で。
(この項おわり)

<『レジスタンスと詩人たち』白石書店>
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2339-75e5877f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック