パリは飢える(中)「勇気」

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  勇 気
               ポール・エリュアール

 パリは寒さに顛え パリは腹ぺこだ
 パリはもう街なかで栗も食べない
 パリは老婆のように ぼろをまとい
 空気のわるい地下鉄で立ったまま眠る
 そのうえ貧乏人にはもっとひどい不幸がのしかかる
 だが 不幸なパリの
 知恵と熱狂をしめすのは
 パリの飢えた労働者たちの
 気風(きっぷ)のよさだ 火のような激しさだ
 その美しさだ 気前のよさだ
 助けなどを呼ぶな パリよ!
 おまえは無類の生命力で生きてきた
 そしていま おまえは着るものもなく裸で
 蒼ざめ 痩せほそっていても
 なお 誇らかな人間的なものが
 おまえの眼のなかに輝いている
 わが美しい町 パリ
 針のように鋭く 剣のように強く
 無邪気で 抜け目のないパリ
 おまえは 不義不正には我慢できない
 ──おまえには 不義不正だけが唯一の罪悪なのだ
 さあ 自分を解放するのだ パリよ
 星のように顛えるパリよ
 おれたちの 生き残っている希望よ
 おれたちの生き残っている 希望よ
 さあ おのれを鎖と泥から解放するのだ
 勇気をだそう 兄弟たち 
 おれたちには 鉄かぶとも長靴もない
 手袋も お上品な行儀作法もない
 だが 一条の光がおれたちの血管(みぬち)に射すと
 おれたちの光明がもどってくる
 おれたちのなかの いちばんすばらしい人たちが
 おれたちのために死んだのだ
 そしていま その人たちの血が
 おれたちの心臓を流れる
 ふたたび朝が パリの朝がやってくる
 解放のあけぼのの光が
 生まれでる春の息吹きが やってくる
 おろかな敵軍は 落ち目だ
 おれたちの敵 あの奴隷どもが
 もしも分別を持っていたら
 分別をもつことができるなら
 やつらもまた立ち上がるだろう
                     (一九四二年)
(つづく)

<『レジスタンスと詩人たち』白石書店>
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コメント
この記事へのコメント
すごい。
なんなんですか、これ。
こんなの初めて見た。
絶望の中に、ちゃんと希望を拾ってる人達がいたんだ。
ちゃんといたんだ。
2014/11/05(水) 23:19 | URL | 高梨茂美 #9CL13rJw[ 編集]
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