世界の共産党員物語 パブロ・ネルーダ(上)─2

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 ファシストへの怒り歌

 スペインでは、すでに三年前(一九三一年九四月)の選挙の結果、平和裏に王制が廃止されて、スペイン共和国が誕生していました。スペインの若い詩人たちは、共和国を支援して、希望に燃えて新しい「ルネッサンス」を迎えていたのです。
 しかしファシストたちは若い共和国の隙(すき)をうかがっていたのです。そして一九三六年七月、ヒットラーとムッソリーニに支援されたファシスト・フランコの軍隊はスペイン人民に襲いかかり、ここにスペイン市民戦争が始まります。
 ファシストどもの反乱による悲惨な流血の光景をまのあたりに見て、ネルーダは最初のヒューマニズムの叫びをあげ、ファシストへの怒りをうたうのです。「そのわけを話そう」という有名な詩がそれです。

 ある朝 まっ赤な火が
 大地から吹き出して
 すべてのものを なめつくした
 そのときから 戦火が燃えあがり
 そのときから 硝煙がたちこめ
 そのときから 血が流れた
 悪党どもは空の高みからやってきて
 子供たちを殺した
 街じゅうに 子供たちの血が
 子供の血として素朴に流れた
 来て見てくれ 街街に流れている血を
             (『心のなかのスペイン』)

 こうして書かれたファシズム反対・スペイン人民支援の詩は『心のなかのスペイン』という詩集となってスペイン人民戦線の兵士たちに愛読されたのです。

 ネルーダはこの時代を回想して書いています。
「わたしはマドリードで生涯のもっとも重大な時期を過した。われわれはみなファシズムにたいする偉大なレジスタンス(抵抗闘争)に魅きつけられていた。それがスペイン戦争だった。この体験はわたしにとって何か体験以上のものであった。スペイン戦争の前、わたしは多くの共和派の詩人たちを知っていた。ガルシーア・口ルカは、このスペイン史上もっとも輝かしい政治的世代の象徴であった。これらの人間を物理的に破壊するということは、わたしにとって怖(おそ)るべきドラマであった。こうしてわたしの古い生活はマドリードで終った…」(ロルカは、一九三六年八月ファシストによって銃殺された)。

 新しい旗のもとに立つ

 スペイン戦争が終って、チリに帰ったネルーダは、もう以前の彼ではありませんでした。スペイン戦争は、燃えさかる戦火と流された血をとおして、生死を賭けたファシズムとの闘争をとおして、真実はどこにあるか、人類の未来と希望はだれの肩にかかっているのかを、ネルーダに指し示したのです。血にまみれた英雄的なスペイン人民がネルーダに教えたものは、生きてたたかう義務でした。この光に照らして、彼は二十年来遠ざかっていた自分の泉、自分の兄弟たち、自分の祖国をみいだすのです。「新しい旗のもとに立つ」という詩に彼は書きます。

 ある日 人類の夢で
 胸おどらせながら
 たくましい使者がやってきた
 おれの飢えた夜のなかに──
 そっと忍び足で歩くおれの狼の足どりを
 人間の足どりにあわせるようにと

 こうしてネルータは、たたかう人民の側に立って、「人間の足どり」にあわせて、たたかいに参加してゆきます。共産主義者として。
 一九三九年、第二次世界大戦が勃発すると彼はチリに帰り、やがてメキシコ駐在領事として赴任します。
 一九四二年のある朝、メキシコ市の壁という壁に、ひとつの詩が貼りめぐらされたのです。それはスターリングラードにおいて、ヒットラーのナチス・ドイツ軍の包囲作戦とたたかうソヴエト赤軍の英雄的な抵抗にささげられた熱烈な賛歌でした。作者はネルーダでした。

 かつてわたしは流れる時や水を歌い
 死の蒼ざめた姿や悲しみをうたった
 わたしはまた大空を歌い林檎を歌った
 だがいまわたしは歌うスターリングラードを

 わたしが歌うのはおまえの城壁を守り
 倒れていった偉大な死者たちのこと
 死にゆくおまえを見てわたしの声は鳴りひびいた
 鐘のように風のように スターリングラードよ
 砲弾にぶち抜かれた 大地の胸を
 死者たちはかがやく勲章で飾った
 死んだものも 生きているものも
 立ち上り奮(ふる)いたったスターリングラードよ
 ・・・

 ネルーダはスペイン市民戦争をとおして、ソヴエトだけが世界を守るだろうということを学びとっていたのです。
<(中)へつづく>

<『月間学習』1987年9月号>
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