カリュンガーノ「おれはどこにいるか」

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 おれはどこにいるか
                   カリュンガーノ 大島博光訳

おれを 探しまわるな
おれのいない場所で

おれは 生きてるのだ
大地に身をかがめて
むきだしの背中を
  鞭で追いたてられて

おれは 生きてるのだ
港湾で
ボイラーに石炭を投げこんで
ひとびとの歩く道の上に
機械を走らせて

おれは 生きてるのだ
おふくろの からだの中で
じぶんの肉を売りながら
  おれの性(セックス)は
  愛のためにあるのではない

おれは 生きてるのだ
おれを 憎悪で
  情容赦もなく
    たたきのめす文明国の
    街まちを流れ歩いて

もしも誰かが おれの声をきいたなら
まだ おれが歌っていたなら
それは おれがまだ死ねないからだ
  だが おれの苦しみをきいてくれるのは
     お月さんだけだ

ここ アメリカにも
そうだ
そこにもまた おれがいるんだ
そこでも おれは生きてるのだ

しかし リンカーンは
暗殺されてしまった
おれは
  おれは
毎日 リンチをうけている

すばらしい速さで つっ走る
あの特別列車は
おれが 数百年も流してきた
血と
  金でつくられているのだ

それなのに
どうして おれを探すのだ?
ベートーベンの『栄光』の中などに

おれは ここにいるのだ
いたるところの 波止場の
船倉から立ちのぼる
千万の呻めき声のなかに
おれは 突っ立っているのに

ロブソンやヒューズの声の中に
ゴディドールや ブラック・ボーイの
セガールや ギリエンの声のなかに
おれは
  ぴんぴんしているのに
この人たちは
大地の胎内からよみがえって
おれのからだで
生活の土台を変えたのだ

生活の土台
おれは そこにいるのだ

おれは
死を拒否する生の詩を
夜の果てと
  日の出との詩を
意識的に 不屈に
つくりあげた人たちの総和なのだ

 カリュンガーノ──一九二九年モザンビークに生れる。パリに遊学。

(自筆原稿)

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