アラゴン「リラとバラ」

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リラとバラ

 
(『アラゴン詩集』飯塚書店)
 
(訳注) 「六月」── 一九四〇年六月、ダンケルクの敗北につづいて、六月十四日にはパリが陥落し、十八日には独仏休戦条約が調印される。
 『リラとばら』は、一九四一年九月、「フィガロ」紙に発表された。フランス軍の敗戦、降伏後の、戦々兢々とした沈黙の時代に、この三〇行の詩は、大きな反響をよび起したのだった。「フィガロ紙」の批評家アンドレ・ルッソーは、この詩は、「新しい詩の開花」の始まりを告げるものであり、「フランス精神に与えられた一種の恩寵であり、フランス人の心がフランス的な生命によってのみ生きるという意志をかためることのできた、血と涙の輝く瞬間」を定着した、といってこの詩を讃美した。
(『アラゴンとエルザ 抵抗と愛の讃歌』)
 リラとばら

おお 花の咲く月 虫が姿をかえる月
雲もなかった五月と 短刀で突き刺された六月と
わたしは忘れるまい リラと ばらとを
春がそのひだのなかで まもった人たちを

わたしは忘れるまい 恐ろしい悲劇のまぼろしを
囚われの行列と叫び声と 群衆と太陽とを
愛する者を積みこんだ荷車や 野菜などを
わなわなふるえる大気を 蜜蜂のうなるような街道を
戦争に勝ちほこった 軽はずみな奴らを
愛国者がいち早く流し描いた赤い血を
そしてリラの香りに酔った人民にかこまれて
刑場で立ったまま死んでいった人たちを

わたしは忘れるまい 消えうせた大むかしの
ミサの祈祷書にも似た フランスの庭を
夜な夜なの騒騒しさと なぞをひめた沈黙を
伸びた道ぞいに 咲きでたばらの花花を
恐怖をまきちらして 通り過ぎる兵士どもに
狂った自転車乗りどもに 皮肉な大砲に
哀れな身なりをした にせの野営兵どもに
そして恐怖の風に 雄々しく立ち向った花花を

なぜか知らぬが これらの光景の渦巻きは
わたしをいつも同じ停留所へつれてゆくのだ
黒い花模様をつけた将軍のいるサント・マルトへ
森のほとりの一軒のノルマンディ風な別荘へ
みんながだまりこみ 敵はやみの中でお休みだ
こん夜 パリーはついに降服したということだ
わたしはけっして忘れるまい リラとばらとを
そしてわれらがうしなった二つの愛を

最初の日の花束よ リラよ フランドルのリラよ
そのやさしい影は 死者の頬を色どる
そして君たち隠れ家の花束 やさしいばらたち
はるか遠い戦火の色をしたアンジウのばらたちよ
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