fc2ブログ

リトソス 「平和」

ここでは、「リトソス 「平和」」 に関する記事を紹介しています。



平和

平和


(『赤旗』1984年2月4日)

*ヤニス・リトソスは一九〇九年生まれのギリシアの詩人。フランスの文芸誌『ウーロップ』誌にときどき作品が出ていたり、アラゴンがリトソスに論及していたのを散見したことがある。(大島博光)

 平 和
         ヤニス・リトソス
          大島博光 訳

子供の夢、それが平和だ
母親の夢 それが平和だ
木かげの 愛のことば
それが 平和だ

世界の顔の上の傷口が閉じる持
死者たちが寝返りをうって
自分たちの流した血がむだでなかったと知って
ぐっすりと 眠りにつくとき
それが 平和だ

平和は 夕ぐれの夕めしの匂いだ
街に停る自動車(くるま)の音を
もう びくびくして聞かないとき
扉を叩く音が 友だちだとわかるとき
それが平和だ

平和は 温かい一杯のミルクだ
眼をさます子供の前に置かれた一冊の本だ

牢獄が図書館につくり変えられるとき
夜 歌ごえが戸口から戸口ヘと湧き上り
春の月が 雲まから現われるように
土曜日の夕ぐれ ひげをそりたての労働者が
街の床屋から出てくるとき
それが 平和だ

死が 心の中にほとんど場所をとらないとき
詩人とプロレタリヤが同じように
夕ぐれのカーネーションの香りを吸うことができるとき
それが 平和だ

わたしの詩のレールの上を
小麦とバラを載せて
未来に向けて出発する列車
それが 平和だ

わが兄弟たち
平和のうちにあってこそ 全世界は
あらゆる夢を抱いて 胸いっぱい呼吸する
わが兄弟たち きみたちの手をつなぎたまえ
それがそれ 平和だ
(「ウーロープ」一九八三年九・十月号)

(『赤旗』1984年2月4日)
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2212-595f7556
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック