ヒクメット「処方箋」

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 処方箋
              ヒクメット 大島博光訳

兄弟たち
  病んでいるひとたち
    君たちの病気はよくなるだろう
苦しみと痛みは やわらいで
やすらぎがやってくる
ひんやりとここちよい夏の夕ぐれが
   うっとうしい緑の枝ぐみをくぐってくるように
君たちは寝床から起きあがり
   出かけてゆくだろう
ふたたびきみたちは見いだすだろう
   パンと塩と
      太陽の味を

レモンは黄いろく熟れ 蠟燭は溶ける
枯れたすずかけの木はどっと倒れる
兄弟たち 病んでいるひとたち
       だが わたしたちは
蠟燭でも レモンでも すずかけでもなく
さいわいにも 人間なのだ
わたしたちは しあわせにも知っているのだ
わたしたちの薬のなかに
   希望という薬を配合することを
そうして辛抱づよくふみこたえることができる
『どうしてもおれは生き抜かねばならぬ』と

兄弟たち
   病んでいるひとたち
      わたしたちはよくなるだろう
苦しみと痛みは やわらぎ
やすらぎがやってくる
ひんやりとここちよい夏の夕ぐれが
   うっとうしい緑の枝ぐみをくぐってくるように

      フランチチコビー・ラチーヌにて
          一九五五・六・三〇

(自筆原稿)
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