ジャックリーヌ・ロックと「カリフォルニー」荘(5)巨匠たちとの対話─3

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 さらにヴェラスケスの「女官たち(ラス・メニナス)」の主題によるヴァリエーションにおいては、より積極的な翻案が見られる。周知のように、プラド美術館にある「女官たち」の画面は、画家のモデルになっている王と王妃と、その前にくりひろげられている情景から成っている。画家はこの絵を描くために、この情景の左側に立って、部屋ぜんたいを眺めている。この画家はヴュラスケス自身の自画像であり、彼のそばには、女官たち、小人、犬、王女がいる。背景の開いた扉からは、ひとりの貴族が外へ出ようとしている。この扉のそばの鏡には、ポーズをとる王と王妃が映っている。この鏡は人物たちの役割が逆になっていることを解く鍵である。ピカソの四四のヴァリエーションの最初の作品をみると、この逆になった舞台構造はひとつも変っていない。ピカソが変更している点は、人物たちの造形的な関係にある。ピカソにあっては、画面の中の画家は、画布とお同じくらい大きく、その頭は画面の上縁(うわぶち)に達している。ヴュラスケスからピカソへ眼を移すと、やはりこの引伸しがふかい衝撃を与える。そこに、この人物にたいするピカソの感情的な過大評価をよみとることができる。反対に鏡のなかの王と王妃はぼやけている。そして画面の右側の端役たちや犬は、下絵のままに放置されている。女官たちの衣裳の細部が、わずかにピカソの画面にも移し換えられている。画家はヴュラスケスにあってはおだやかな優雅さをたたえているが、ピカソにあっては、キュビスム風な怪物になっている。この画家こそがこの場面では真の王であって、その頭は造形的混沌のうえに抜きん出ている……。

女官たち

(つづく)
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