人間味がにじむ  ゲバラ『革命の回想』

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人間味がにじむ

真木嘉徳訳 ゲバラ 革命の回想

 チェ・ゲバラの名には、すでに伝説のひびきがある。こんど、彼の『革命の回想』をよんで、チェが伝説の人とならずにはいない宿命のようなものを、わたしは感じた・・・。
 この本は、一九五六年十二月の『グランマ号』による上陸から、一九五九年一月のハバナ奪取にいたる間の、キューバ革命戦争の回想録であり、その英雄叙事詩である。メルルも言うように、それは『単純率直さと、あらゆる文学的主張と無縁であることによって、読者に強い印象を与える』そこには革命家ゲバラの謙虚で人間味にみちた個性がにじみ出ている。そしてそこには観念的なところがない。すべてが具体的な実践・闘争をとおして語られている。大衆路線、ゲリラ隊における規律、裏切者の処置の問題など、山の中の飢えと渇(かわ)きにも耐える困難な生活のなかで、そして銃火の闘争のなかで、一歩一歩、貴重な犠牲をはらいながら克服されてゆく。その過程の描写は叙事詩のように感動的である。
 『ゲリラと農民大衆とは、次第次第に同質化した。この融合が長い期間の、いつ、いかなる瞬間に生じたものか、われわれの宣言がいつ、いかなる瞬間に身近な事実になったのか、われわれは、いつ、いかなる瞬間に農民と一体になったか、はわからない』現実の中で運動が血肉化されてゆく過程の微妙さがここに捉(とら)えられている。また婦人ゲリラ隊員リディアのいかにもラテン・アメリカ的な明るさと大胆さにみちた肖像画も印象的である。
 この本を貫いているのは、ゲバラのとりつかれたような革命精神である。わたしはそれを宿命のようなものと感じたのであって、あるいは『革命の詩人』とでも呼ぶ方がふさわしいかも知れない。フィデルにあてた『別れの手紙』をよめば、そう呼ぶのが不当でないことがわかるだろう。また、本書に収められているメルルの『カストロとゲバラ』は、多くのデマや憶測を生んだチェの『失踪(しっそう)』について、ゆきとどいた解説となっている。
 中国革命の延安には、カナダ人の医者べチューンがいた。そしてキューバ革命のシェラ・マエストラには、アルゼンチン人の医者チェ・ゲバラがいた。このことを、本書は読者の記憶にきざみつけるだろう。
  (大島博光・詩人)=筑摩書房 六五〇円=

<北海道新聞 46年>
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