あの子はいつ来るんだろう?  ──コミューンの前夜 (3)パリの防衛

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(3)パリの防衛

 「パリよみずからを守れ」という一八七〇年の叫びは、一九四〇年六月、ナチス・ドイツのパリ入城を前にして、フランス共産党がレイノー内閣に発した声明を思い出させる。
 「共産党は、ファシスト侵略者の手にパリをゆだねることを裏切と見なすだろう。共産党は、パリの防衛をもっとも緊急な民族的義務と見なしている。
 そのためには次の処置が必要である。
 一、戦争の性格を変えること。この戦争を独立と自由のための民族的戦争に転化すること。
 二、投獄あるいは禁錮されている共産党員の代議士、活動家、および数万人にのぼる労働者を釈放すること。
 三、内閣、省、および参謀本部にまで巣くっている敵の出先役人を直ちに逮捕し、彼らを見せしめの懲罰に処すること。                        ・
 四、これらの緊急な処置は、人民の愛国的情熱を呼び起こし、大衆の昂揚を可能にするであろう。それは即刻発布されなければならない。
 五、人民を武装させ、パリを難攻不落の城砦に変えねばならない。」
 この二つの悲壮な叫びは、いずれも人民的愛国主義の発露であり、ただ労働者階級だけが、危機存亡の祖国に忠実であることを示している。

 パリの包囲ちゅうに歌われた多くのシャンソンにも、この愛国主義が鳴りひびいている。それらのシャンソンは『マルセイエーズ』『カルマニョール』あるいは『出撃の歌』などの曲にのせて歌われた。
 『パリの防衛』という歌は、包囲されたパリの窮乏した日常生活を描いている。

  なんと 町なみの眺めの
  寂れはてて 暗いこと
  まだ 宵のくちだというのに
  ガス燈は 消えてしまい
  夕ぐれの 店という店は
  まったく 見るも哀れだ
  ある日 哀れな母親は
  石炭も 薪(まき)もなくなって
  顛える子供を 抱いたまま
  日がな一日 いまかいまかと
  配給を 待ちつづけた
  子は凍えて 死んじまった!

  兵隊が 塹壕のなかで
  寒さに凍えて 死んでゆく
  兵隊たちは 思いきり
  身をもって 祖国をまもり
  敵と勇ましく戦って
  もっとりっぱに 死にたかった

  食欲なやつらもいるものだ
  こちらの方が 恥ずかしくなる
  貧乏人から しぼりとる
  商人どもの 悪どさは──
  一〇スーの くさったキャベツを
  なんと六フランで売りつける!

  猫や 犬や ねずみまで
  皮をむいて たべてしまった
  むかしはごみ箱に棄てたものまで
  いまは 山盛りに 売りに出る
  しかもやはり 食べてしまう
  飢え死にを せぬように

  デスノワイエの街(まち)でのこと
  あわれな 屋根裏部屋で
  妻が 息を ひきとった
  夫が ひとり看(み)とっていた
  救いの手をのべる者もなく
  こんどは夫が 飢え死にした


  どんなに多くの母親が
  いまも 武運に見放された
  わが子の運命を 案じて
  嘆き悲しんでいることか
  鉛の弾丸(たま)で 死にはせぬか
  せめて牢屋にいてくれぬか と

      教 訓

  よし! この戦争の苦しみに
  音(ね)をあげずに がんばろう
  希望をうしなうどころか
  いよいよ勇気は増すばかり
  おれたちの団結があるかぎり
  パリは 敗れはしない!


 ここには、包囲されたパリの窮状、そのなかで闇市によって儲ける悪どい商人たちの姿が描かれている。国民軍の兵士の日給が一・五〇フラン(三〇スー)であった時、チーズ一キロが六〇フラン、豚肉一キロ四四フラン、猫一匹一五フラン、鶏卵一個二・七五フラン、鼠一匹二・二五フランであった。死んだ子供たちの九〇パーセントは栄養失調によるものであった。
 それとは反対に、パリに残っていた上流階級は、レストラン「ブレバン」でたらふく、ご馳走をたべていたのである。テオフィル・ゴーティエ、エルネスト・ルナン、エドモン・ド・ゴンクールなどの上流文士たちは、ブレバンンの店につぎのような賞牌(メダイユ)を与える。「パリが包囲されていた間、ブレバン氏の店に通いつづけた人士たちは、……包囲された人口二百万の都市で食事をとっている、などとは、一度も気がつかなかった。」
 ブレバンは、『ビフテキ一枚のパリ』のなかでも歌われている。
(つづく)

<『パリ・コミューンの詩人たち』>
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