静江の狂人 愛するとは

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  静江の狂人
                 大島博光

 中世アラブ文学に『ライラとマジュヌーン』という悲恋物語がある。このアラブの伝承的な物語詩の主人公カイスは美しい娘ライラを熱愛し、ライラも彼の情熱にこたえて結婚を約束する。しかしライラの父親は二人の結婚をゆるさない。絶望と苦悩のあまり、狂ったカイスは放浪生活をおくり、吟遊詩人となってライラへの愛をうたいつづける。そこで「ライラの狂人(マジュヌーン)」というあだ名がカイスに与えられる。médjnounとはアラブ語で狂人、とり憑かれた者を意味する。
 アラゴンが『エルザの狂人』Le Fou d'Elsa という厖大な詩を書いたのは『ライラの狂人』に想を得てのことであろう。この詩のなかで、アラゴンはマジュヌーンの口をとおして歌っている。しかしアラゴンが歌うのは過去のライラではなく、未来のエルザである。
 「わたしは未来の美しさを見るために過去をもう一度思い描く」
とアラゴンは書く。

 そうしてもしもわたしが死んだ妻静江を狂わんばかりに歌って歌いつづけるならば、わたしもまた「静江の狂人」ということになるだろう。



愛するとは


(つづく)

<詩集『老いたるオルフェの歌』>
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