あの子はいつ来るんだろう?  ──コミューンの前夜 (2)パリよ みずからを守れ!

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(2)パリよ みずからを守れ!

 九月二日、ナポレオン三世はセダンにおいて包囲され、降服し、捕虜となる。こうして九月四日、第二帝政は瓦壊する。
 フランス人民は共和制を要求する。そのとき権力を横どりしたのはブルジョアであった。マルクスは書いている。
 「一八七〇年九月四日、パリの労働者が共和制を宣言し、それがほとんどたちどころに、ただ一つの異議の声もなく、フランスの全土で歓呼をもつて迎えられたとき、ティエールをその政治家とし、トロシュをその将軍とする官職あさりの弁護士の一党が市庁(オテル・ド・ヴイル Hotel de Ville)を乗取った。……当時労働者階級の真の指導者たちはまだボナパルトの監獄に閉じこめられており、またプロイセン軍はすでにパリに向けて進撃中であったから、この不意打ちのどさくさのなかでパリは、権力を国防の目的だけに行使するというはっきりした条件つきで、この連中による権力の横領をがまんしたのであった。」(国民文庫版『フランスの内乱』五一ページ)
 こうして「国防」政府が成立する。しかし、ティエール一味の将軍、官僚、大資本家たちにとって、もはやプロイセンにたいする戦争は意味がない。いまや、共和国にたいして、フランス人民にたいして戦わなければならない。
  一方、戦争を望まず、戦争反対を叫んでいた人民は、滅亡に瀕した祖国を救うために、愛国的情熱に燃えて戦闘をつづけることを要求する。
 この頃書かれたウジェーヌ・ポティエの詩は、パリ市民の愛国的感情を反映している。

   パリよ みずからを守れ!

  聞け 敵軍のとどろく軍靴(ぐんか)の音を
  パリよ なんという陰欝な懲罰だろう
  おまえの丘のうえから 見るがいい
  ドイツ軍の前哨陣地から立ち上る煙を
  しかもこちらにあるのは いかにも
  「帝政」にふさわしい 敗戦と混乱ばかり
  だがおまえは ドイツ軍には道をとざす
  パリよ みずからを守れ みずからを!

  利権あさりのために たった一日で
  栄光の絶頂から 落っこちるとは
  まことに 殺し屋どものご治世が
  つくり出したフランスの 体(てい)たらくだ
  だがおまえは 再び英雄的行動に立ち上る
  おまえは 敵前に降伏したりはしない
  あの自信もない 老いぼれ(1)のように
  パリよ みずからを守れ みずからを!

  やつらが入城したら? 任務はきびしい
  すべての人びとが 怒り湧き立つとき
  女たちは 煮え溶けた松脂を運び
  ガヴローシュ(2)は 舗道の石をはがす
  さあ おれたちのパリよ 古い同志よ
  鐘楼の 警鐘を うち鳴らすのだ
  石だたみを運べ……バリケードを築け!
  パリよ みずからを守れ みずからを!

  バビロン(3)などは どぶへ投げ捨てろ
  淫売どもや 王公どもを
  悪党どもや 皇帝どもを
  怒りふるえる手で 追い払え
  フランス人のフランスを立ち上らせて
  ふたたび この怖るべき存亡の日に
  九三年の噴火(4)を 呼び起こせ
  パリよ みずからを守れ みずからを!
                      (一八七〇年九月)

(1)老いぼれ──ナポレオン三世を指す。一八七〇年九月二日、セダンにてドイツ軍に降服する。
(2)ガヴローシュ──ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の人物。勇敢で侠気のあるパリの浮浪児。
(3)バビロン──腐敗した上流社会を指す。
(4)九三年の噴火──一七九三年一月ルイ十六世が処刑される。六月、パリの民衆は武装蜂起し、国民公舎を包囲する。
(つづく)

<『パリ・コミューンの詩人たち』>

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