稲木信夫評論集『詩人中野鈴子を追う』

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中野鈴子

 稲木信夫評論集『詩人中野鈴子を追う』が刊行されました。
 中野鈴子は戦前、20数才でプロレタリア文学運動に参加した代表的女流プロレタリア詩人。治安維持法による弾圧で自らも投獄されながら、小林多喜二らの救援活動をし、詩を作りました。戦後、郷里福井にて共産党組織の創設に尽力するとともに新日本文学会福井支部を結成、福井における文学運動の源流となりました。

 稲木信夫さんは中野鈴子研究の第一人者で、『詩人中野鈴子の生涯』『すずこ記 詩人中野鈴子の青春』を著し、中野鈴子に光を当てる貴重な仕事をしてきました。本著はその後書かれた数々の評論や講演を収録した総集編になっています。第二章(すずこ記 農民詩人への道)は中野鈴子との交流を通じて文学の道を歩んだ稲木さんの自伝ともなっています。

 第四章の二本のインタビュー(大島博光と松田解子)も興味深く読まれます。
 ・・・大島(『蝋人形』の編集にかかわったきっかけについて聞かれて) 西條八十先生がね、そのとき早稲田の仏文の先生で、・・・私の卒論を評価してもらって。私がランボオをやって先生もランボオ専門家だから、そういう関係で(『蝋人形』の編集に関わった)。ところが、弟子の方は、そこまではいいけど、それから上の、ブルジョアジャーナリズムやそっちへはお伴しないわけだ。しないどころじゃない、ほとんどこっちへ(左へ)行っちゃうわけだ。・・・その前に学内の学生運動の中で、マルクス主義の洗礼を受けているから、それだけ違っているのですよ。・・・そんなことは西條先生は知らないからさ、俺を裏切ったなと思うかもしれないけれど、そんなものしょうがないよ。・・・だってそんな頃もうアラゴンの革命詩の翻訳をやっているのだから。西條八十のところにいるおかげでね、・・・

 ・・・松田(詩のことで教えてくれた人がいたのではないですか?と聞かれて) ・・・詩で教えられた人というとやっぱり宮本百合子さんでした。・・・「たとえ下手でもなんでも、私たちが、今日を生きているこの社会のひどさ、不平等ということを私たちが書いてこそ、印刷されて、あるいは本にされたりすることによって、つまり日本が中国を侵略し、朝鮮をいじめていた時代に、こうだったということが残る」と言うのです。「それを書かないでいれば、そんなことはしたことがないって反動勢力に言われればそれっきりでしょう?」これは痛かったです。まさにそうでしたから。・・・



*『詩人中野鈴子を追う』目次
第一章
    NHKラジオ第一 関西発ラジオ深夜便「こころの時代」から①  
      鈴子、芥山、そして… 
    NHKラジオ第一 関西発ラジオ深夜便「こころの時代」から②  
       愛と抵抗の詩人中野鈴子
    【講演】中野鈴子といのちの詩  
    【講演】中野鈴子の詩  
    【講演】中野鈴子の生涯と詩 没後五十年にあたって  
第二章
    すずこ記 農民詩人への道  
第三章
    中野鈴子の詩にふれた最近の文章の紹介  
    「花」と鈴子の関係について  
    一本田・鈴子の廃家 
    鈴子の手紙  
    『中野鈴子の詩による創作曲集』後記 
    鈴子追想  
    中野鈴子「村葬」  
    中野鈴子と反戦詩 
    若林道枝さんへの手紙  
    寒流をのぼって  
    鈴子は生涯「民衆の詩人」  
    近代日本女性詩の系譜から 中野鈴子没後五十年に  
    羽生康二氏著『昭和詩史の試み』から  
    詩人中野鈴子を追って  
第四章
    【インタビュー】大島博光氏に聞く 中野鈴子と詩誌『蠟人形』の頃 
    【インタビュー】松田解子さんに聞く すぐれた詩人が追求するものは…… 
    中野鈴子・略年譜
    初出一覧  
    詩人中野鈴子を追う~あとがきにかえて~
    著者略歴
(コールサック社 2014年3月初版発行)
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