ピカソ──フランソワーズ・ジローと子供たちと (3)

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(3)
 しかし、この楽園での幸福も、そう永くはつづかなかった。
 一九五三年三月八日に描かれた「たわむれる女と犬」の画面は、その意味で、きわめて興味ぶかい。頭のうしろに髪を束ねたフランソワーズが、両手で犬の足をつかんで、悲鳴をあげる犬のうえに、立体主義風な顔でのしかかっている。造形的均衡によって分割された二つのブロックから成る立体主義的な構図は、画面のはげしい動きを定着している。ピカソは迫りくるフランソワーズとの訣別を予感しているかのように、たわむれという外観にもかかわらず、怒りと反抗にみちた恋人の姿を描いている。この絵のなかで、おびえて叫んでいる犬はむろんピカソじしんである。この絵はその頃の二人のあいだの険(けわ)しい関係を物語っているのである。
 この絵が描かれた日の三日前に、スターリンが死に、つづいてスターリン肖像事件が起こる。このとき、フランソワーズはピカソの「スターリンの肖像」を非難して彼を深く傷つけ、二人の仲はますます悪くなる。
 九月、「歴史的記念物(モニュマン)との生活」に疲れたと言って、フランソワーズ・ジローは二人の子供を連れて、ピカソから去ってゆく。かつて、オルガ夫人も息子ポールを連れて同じふるまいに出た。しかしその時、ピカソは五十歳だったが、こんどは七十二歳である。いまやクロードとパロマを失い、誇りを傷つけられたミノトールは、ただひとり茫然としてあとに残された。
(この項おわり)

*参照「わたしとピカソ 12 犬とたわむれる女──恋人との険悪な葛藤のドラマ

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