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ピカソ──フランソワーズ・ジローと子供たちと (1)

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フランソワーズ・ジローと子供たちと

(1)
 戦争は終わり、新しい愛が始まる。新しい顔、新しい女の肉体が、ピカソの絵のなかに入ってくる。若くて美しい娘、二十二歳のフランソワーズ・ジローである。それから一九五三年まで、彼女はピカソの伴侶となり、二人のあいだにはクロードとパロマの二人の子供が生まれる。
 ピカソの作品を、もっぱら彼の愛と情念の側面からだけ説明するのは行き過ぎであろう。しかし戦争前に「オルガの時代」「ドラ・マールの時代」「マリ・テレーズ・ワルターの作品群」があったように、一九四五年から一九五〇年にいたる作品群には、フランソワーズ・ジローの反映を見ることができよう。ピエル・デックスは書く。
 「フランソワーズは、ピカソの精神にうかぶあらゆる造形的主題、あらゆる策略の新しい実験台となる。二つの黒いアーチの眉、顔の曲線の完璧な均斉、大きな丸い乳房、これらがピカソの表現におけるフランソワーズの特徴である。それに、ほっそりした体つきがつけ加えられる。ピカソは彼女の頭をひとつの円、ひとつの平らな楕円に描き、丸い小石のうえ、骨のかけらの上に彫りきざみ、あるいは石版画(リトグラフ)の柔軟さをもってデッサンする。ピカソは彼女の頭を太陽のように丸く描き、長い髪の渦巻で囲む」(ピエル・デックス「ピカソ」一九六四年)
 一九四六年五月五日付の有名な「花女」La Femme fleur の画面には、じつさいこの太陽、髪の毛の渦巻が見いだされる。花のモチーフにしたがって、太陽はひまわりの花となり、髪の毛の渦巻きはひまわりの葉になっている。その「細っそりとしたからだつき」は細い針金のよぅな花の茎として描かれ、その茎に二つの乳房が果実のようにくっついていて、多少エロチックな雰囲気をかもしだしている。
 一九四六年の秋にアンチーブで描かれた大作の牧歌「生きる悦び」においても、サチュロス(半人半獣の好色な森の神)や陽気な仔山羊たちのまんなかで踊っている女に、フランソワーズの細いきゃしゃな姿が描かれている。このギリシャ神話風な構図をもった「生きる悦び」は、そのあふれるばかりの快楽主義において、もっとも陽気なマチスの絵に伍するものである。
(つづく)

<新日本新書「ピカソ」>

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