地獄のうた

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地獄のうた         
             大島博光

わたしはひとり 地獄におちた
きみと暮した 四十六年が 
あまり楽しく 幸せだったから
わたしはひとり 地獄におちた

わたしは抜け殻 もぬけの殻
風にからから 泣くばかり
枯枝のうえの 蝉殻のように
わたしは抜け殻 もぬけの殻

わたしはひとり 老いねばならぬ
あの木のように 枯れてゆくのだ
梢の方から 根っこから
わたしはひとり 老いねばならぬ

生きるのはもう 苦行だ責苦だ
眼はしょぼつき 息は切れる
壁をつたって 喘えぎあえぎ
生きるのはもう 苦行だ責苦だ 

しびれる足を ひきずって
わたしは夜を よろめきまわる
地獄のなかを のたうちまわる
しびれる足を ひきずって

地獄のなかで 地獄の火と
なおたたかって 生きたまえと
ペッシミストを きみははげます
地獄のなかで 地獄の火と

地獄でこそ 夢みることだ
地獄を出て 星を見る日を
みんなの未来を あけぼのを
地獄でこそ 夢みることだ

そうだ 枯木も夢みるのだ   
泉から 水は流れるだろう
春の香りを 風は運ぶだろう
そうだ 枯木も夢みるのだ

         一九九三年十月

(詩集『老いたるオルフェの歌』)
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