シャヴァンヌ  3 リヨン人気質 (中) Pierre Puvis de Chavannes

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シャヴァンヌ  3 リヨン人気質 (中)

<リヨンの街と自然>
 シャヴァンヌはかういふ芸術家としての理想をリヨンの教育と誇り高い厳格なブルジョアである己が家庭の伝統から学びとったのであった。この教育は彼の母親によって為された。芸術家の魂に対する母親の影響は常に大きいものである。リヨン人の気質は、リヨンの街と田舎との自然によってはっきりと定義されてゐる。リヨンの街は岩と砂との丘の上に立ってゐて、丁度北から南へ向ふ舟の舳にも似てゐる。二つの河が街の前で合流して大河となって地中海へと向ふ。一つはアルプスの永遠の氷河にその源を発して峨々たる山峡を飛沫を上げて下り、その冷たい蒼い透明な水は白砂の川床の上を流れくる。もう一つの川は、ゆるたかにフォシィユより流れ来て緑の丘の間を蛇のように縫ひ、その鏡のように静かな水面に、岸辺の村々の屋根や鐘楼を映し、柳やポプラの樹影を浮べてゐる。そして、その潺湲(せんかん)たる急流と緩るやかな流れとが各々その男性的な美しさと、女性的な優しさとを溶け合はせてゐる。これが静かで壮大なローヌ河である。このローヌ河は、平野や谷間をうるほしたのち、プロヴァンスの輝かな太陽の下に静かにまどろむ。やがて地中海に流れ入る。リヨンの街を取り囲むみどりの山は北風を防ぎ、河と共に甘美な雰囲気を作り出し、しばしばうす靄で街を包み、詩的な風情を添へるかとおもへば、忽ち又殆んど南国的な太陽が明るく街の上に輝くのである。
此処にリヨン人の気質そのもの、魂そのものが見られる。臆病であると同時に大膽であり、神秘的でしかも実証的あり、精力的であるが又優しく、明るくしかもどこかほのかな蔭を宿してゐる。それは、北国への瞑想的な粘着力と南国への明るい霊感とを融合してゐる。この様なリヨン人の魂は、善良さ、純潔さ、独立、自由を愛し、藝術に於いては常に優雅さと洗練と、独創性を特徴とする作品へと向ふのである。シャヴァンヌが心情豊かにして、才気に富める母親に依ってはぐくみ與へられたのは、まさにこの様なたましひであった。
(つづく)

<シャヴァンヌ・ノート>
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