シャヴァンヌ  2 初期の作品 (上)

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シャヴァンヌ 2 初期の作品(上)

<最初の出品>


 シャヴァンヌが最初に出品したのは一八五〇年のサロンであった。当時の模様を彼は次のやうに面白く語っている。
『どうにかかうにか 私は『ピィエタ』を仕上げたばかりであった。聖母の膝の上に死せるクリストが横り、すぐ傍にマドレエヌが跪いてゐる図である。入選にすっかりうれしくなって、開会の当日、私は自分の作品を見るために朝早く出かけた。自分の繪のまへに立ってみると、三人の人物が見えるべきなのに、二人の姿しか見えないではないか!驚いて近づいてよくみると、残念なことに、紫色の衣をつけた聖母は、私がうかつに描いた同じ紫がかった背景の中に溶け込んでゐることがわかった。この時始めて私は色彩の度合(ヴァルール)といふものをはっきりと知ったのだ。それから色調(トーン)の大切なことがわかった。実にこの日から始めて私は画家になったのだ。』
 この繪は永いあひだヌゥイリのアトリエに飾られてゐた。

 同年、彼は『父を救ふために血の杯を飲むソムブルイ嬢』を描いたが、その素描の数葉が今日、残ってゐるだけである。またこの頃には『母親の最後』或ひは『末期の母親の枕もとに立つジャン・カバリエ』と名づけられる作品がある。痩せ衰へた憐れな婦人が、野に面した窓べの寝台の上に横ってゐる。彼女の手は胸の上の大きな聖書のうへに、力なく置かれてゐる。今まで彼女は死の準備のために、詩篇を読んでゐたのだ。寝台と窓の間に、彼女の息子である栗色の髪をした美しい若者が何か聖歌をひくく弦楽器で奏でてゐるやうに見える。
 詩人アンリ・ド・ラクルテエルはこの繪に次のやうな四行詩を寄せてゐる。

 死にゆく母の希(ねが)ひに應(こた)へて、
 息子は悲嘆(かなしみ)の涙を抑へつ、
 いと低く琴を奏づれば、その安けき音(ね)とともに、
 母の魂(みたま)は天へと昇る。

 次いで、力強い筆勢と色彩をもてる『この人を見よ(エクセ・ホモ)』が描かれた。この繪はブルゴオニュの片田舎、シャンパニヤの小さい教会に所蔵されてゐる。
(つづく)

<シャヴァンヌ・ノート>

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