自由都市・東京
大島博光
囚われの自由都市・東京
だが どん底でなお 明日の日を歌う街・東京
あどけない子供たちの遊び場から
いたいけない小学生たちの教室から
競輪場が見える
競馬場が見える
四辻 四辻で 駅前で
官許の賭 宝くじが賣られる
大蔵省の名で賣られる
愛の本も賣れなくなった
本屋はパチンコ屋になった
男も女もむなしい鉛玉を廻している
年寄りも子供も賭けている
太平洋岸のモンテカルロで
オペラ・ハウスの緑のテーブルで
祖國の運命が賭けられているのに
じぶんたちの血と肉が賭けられているのに
パンさえ賣れなくなった
パン屋もパチンコ屋になった
ひとびとは忘れようと賭けている
みじめさを賭けている
生死を賭けるに足る賭を知らずに
自分の運命を変える大きな賭を知らずに
ひとびとは小さな破滅の賭けにふけっている
そうして電車のなかに バスのなかに
木枯らし吹く場末の街に
ひとびとの眼は暗い
ひとびとの額は蒼い
生きた墓場のように
原子砂漠の亡霊のように
そうして焼跡から 錆びた銃剣が立ち上り
埃捨場から 長靴が立ち上り
不吉なサーベルの音をひびかせる
戰爭の重い歩調をとりはじめる
<ノート 昭和28年頃>
大島博光
囚われの自由都市・東京
だが どん底でなお 明日の日を歌う街・東京
あどけない子供たちの遊び場から
いたいけない小学生たちの教室から
競輪場が見える
競馬場が見える
四辻 四辻で 駅前で
官許の賭 宝くじが賣られる
大蔵省の名で賣られる
愛の本も賣れなくなった
本屋はパチンコ屋になった
男も女もむなしい鉛玉を廻している
年寄りも子供も賭けている
太平洋岸のモンテカルロで
オペラ・ハウスの緑のテーブルで
祖國の運命が賭けられているのに
じぶんたちの血と肉が賭けられているのに
パンさえ賣れなくなった
パン屋もパチンコ屋になった
ひとびとは忘れようと賭けている
みじめさを賭けている
生死を賭けるに足る賭を知らずに
自分の運命を変える大きな賭を知らずに
ひとびとは小さな破滅の賭けにふけっている
そうして電車のなかに バスのなかに
木枯らし吹く場末の街に
ひとびとの眼は暗い
ひとびとの額は蒼い
生きた墓場のように
原子砂漠の亡霊のように
そうして焼跡から 錆びた銃剣が立ち上り
埃捨場から 長靴が立ち上り
不吉なサーベルの音をひびかせる
戰爭の重い歩調をとりはじめる
<ノート 昭和28年頃>
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