書評 中平解著「風流鳥譚 言語とヒバリ、その他」

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小説から挙げて考察

中平解著 「風流鳥譚 言語とヒバリ、その他

 本書の副題に「言語とヒバリ、その他」とあるとおり、著者は「仏和辞典」の編者であり、多くのフランス語関係の著書をもつ言語学者である。この本をひらくと、いきなり「ヒバリを食う話」というきわめて刺激的な話がでてくる。ヒバリは、フランス詩の方では春を告げる鳥、希望の象徴としてよく歌われているが、それを食べるなどという話はわたしには初めてで、読み始めたらやめられないようなところがある。
 フランスではヒバリを焼き肉にしたり、バタ焼きにしたり、パテにして食べ、それも美味だという。食べるからには捕らえねばならない。その方法がいくつか書かれている。馬のたてがみやしっぽの毛で作ったワナで捕らえたり、「ヒバリを呼ぶ鏡」でおびき寄せて鉄砲で撃つのである。──これらのことどもを書きしるした文例を、著者はひろくフランス小説群のなかから探し出してきて列挙し、考察を加える。
 たとえば、ジョルジュ・サンド、フロベール、モパッサン、ゾラなどの小説からその文例が挙げられていて、読者はそれらの作家にふれると同時に、フランス人の食生活の一側面にふれることもできるし、それを通してその背後の現実生活をかいまみることもできる。
 そのために、著者はひろく小説を読みあさってカードをつくり、執拗に文例を追求している。その態度はレアリストのものであり、きわめて実証的である。だから読者はおもしろいヒバリの話をよみながら、こういう勉強の仕方、研究態度をも学ぶことができる。むろん、語の語原からの成立、由来の話も随所にあって興昧ぶかい。
 その他、ウグイス、ロスィニョル、カラス、ウソなどの話がある。ウグイスが日本にだけ住む鳥だということを、わたしはこの本で初めて知った。腐肉をあさって食うカラスの肉はうまいという、ぞっとするような話もある。
      (大島博光・詩人)
 (未来社 四六判 一五〇〇円)

<一九八三年十二月、新聞掲載>
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