マドリード 一九七八年十一月 ──チリ連帯国際会議で

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マドリード 一九七八年十一月
   ──チリ連帯国際会議で              大島博光

むかしのコンキスタドールたちの略奪の夢がまだ
王宮やレティロ公園にただよっている市(まち)マドリード

四十年のむかし スペイン人民が血の海に漬かり
世界じゅうからきた 義勇兵たちが骨を埋めた市マドリード

ゴヤの光と闇が いまも生きている市マドリード
ネルーダが 最初の血の叫びをあげた市マドリード

パッショナリヤの孫娘たちが 赤い薔薇を胸に
プェルト・デル・ソルで踊っている市マドリード

きょう にせあかしあの街路樹と石だたみの街に
セゴビヤのギターのような ぬか雨の降るなか

ふたたび 世界じゅうから人びとがやってくる
どんな距離をも越える 熱い連帯を抱いて

人びとはやってきて ここ オドンネル街の
ホテル・コンヴェンションの大ホールを埋める

そこに コルバランがいる アジェンデ夫人がいる
ピカソ未亡人がいる ビクトル・ハラ未亡人がいる

詩人アルベルティがいる エフトシェンコがいる
ニカラグアの婦人代表がいる ベトナムがいる……

血塗られたチリ人民への 連帯とあいさつと
ファシズムへの怒りが 場内に熱くみなぎる

エフトシェンコが ネルーダ追悼の詩を朗読する
ベトナムの代表が チェ・ラン・ビヤンの詩を代読する

スペイン代表がさいごに叫ぶ──「わたしたちは
自由のために四十年待った チリは待たぬように……」

だが この大会を 黒い影がおびやかしている
亡霊どもが くらやみのなかをうごめいている

ここマドリードでは 過去と現在と未来とが
ごっちゃになってせめぎあい たたかっている

だが カスティリヤの野にあの黒豚どもも
もう羊の群れを 喰いちらすことはないであろう

きょう 郊外の体育館から湧きあがる歌ごえに
マドリード市民は唱和する──「ベンセレーモス!*」

*チリ連帯国際会議の最終日、マドリード郊外の体育館で、チリの亡命中の音楽家集団キラパジュンとスペインの音楽家との合同演奏会がひらかれた。超満員のマドリード市民が、じっさいに「ベンセレーモス」を唱和したのである。

<『大島博光全詩集』──ヨーロッパ詩集>

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