カスティリヤの野

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 カスティリヤの野

マドリードのほこりだらけの駅からグラナダヘ
ディーゼル機関車の曳っぱるおんぼろ列車は
驢馬のような悲しげな汽笛を鳴らして

──まさしくサンチョ・パンザの驢馬の啼き声だ──
カスティリヤの荒野をのろのろと走る
背の低い葡萄の根株の畝がつづく
ときたま これも背の低いオリーヴ畑が現われる
そして屋根の抜け落ちた石の廃屋

そのむかし
あの国際義勇旅団の義勇兵たちが
この石ころだらけの野で倒れていった
ロバート・キャパの「倒れる兵士」の
生から死へと倒れこむ あやふやの一瞬を
定着させた映像が浮かんでくる

それから 雑草もまばらな
赤茶けた砂漠がつづく
もう一軒の家も見えない
むろん 村なども見えない
生きているものといえば
空を飛んでいる鳥ぐらいのものだ

この不毛の荒地を見れば
わかろうというものだ
十七世紀
ユカタン半島のマヤを食い荒し
インカの皇帝アタワルパを食いちぎり
チリのアラウコに襲いかかったのは
このカスティリヤの野の狼どもであり
エストラマドーラの豚飼いピサロであった

この不毛の荒地を見れば
かれらの飢えのほどがわかろうというものだ
                       (1979年11月)

<『大島博光全詩集』──ヨーロッパ詩集>

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