風刺の季節
──ふたたび「国家機密法」に反対する
いま 怒りがこの列島に 渦巻くとき
詩人にとって それは 風刺の季節だ
あくどい敵の悪業悪政に 風刺の羽根をつけて
みんなの眼に見えるように 飛ばしてやるときだ
詩は 神秘や永遠を 風や影をうたうものだ
政治や風刺をもちこむな 花園を荒らすな
そんな 屋根のうえの夢遊病者のうわごとや
芸術至上主義者の禁制(タブー)を ぶち破るときだ
アラウカニアの 石つぶてのような 風刺を
ファシストどもに投げつけたネルーダのように
黒い怪物どもの正体を 白日の下にあばき出し
歴史の壁にさらし はりつけにしてやるときだ
とりわけ テレビのブラウン管に姿を現わすや
みんなにスリッパでひっぱたかれる あいつを
あいつは うそとペテンで ひとをだまくらかし
三〇四の席をかすめとって おごりたかぶり
あのおしゃべり野郎*は みずから本音を吐きちらし
その黒い手の内を 世界のまえにさらけ出す
アメリカには 黒い羊や褐色の羊がいるから
知的水準は やはり比較的に 低いものだ・・・
おれたちは黄色いが 単一民族で 優秀だ
優秀な狼は そこらの羊を食う権利がある・・・
つい あのヒットラー狼の口まねが出てしまう
それが 舌足らずの 失言などであるものか
そうしてあいつは 腹黒い野望をおし通すために
でっかい網を 人民の上に掛けようというのだ
勝手放題にふるまって 反対する奴をひっ捕らえよう
狼が 森のなかに罠をしかけようというのだ
また 犬どもが 嗅ぎまわりうろつきまわり
とつぜん 家のまえに自動車(くるま)がとまったり
でくの坊や棍棒や ピストルをのさばらせて
国じゅうを牢獄に 地獄に変えようというのだ
もしも 日本の国家が あいつの言うような
まやかしのアイデンティティなどをもつなら
人民のひとりひとりが 生きた人間としての
真のアイデンティティを奪いとられるだろう
そうして「象徴」をまた 神にまつりあげて
子供だましの神話や不条理に土下座させて
またしても 春の蕾のような 若者たちを
戦争へ 核戦争へ 駆り出そうというのだ
海の向うの虎の威にすりよって 手先となって
核戦略やSDIのお先棒をかつごうというのだ
あいつらには 悪知恵はあっても 理性がない
利権や利潤に眼がくらんで 未来が見えない
盲目の狼が 目かくしした羊の群を駆って
ふたたび 奈落の闇へ 急ごうというのだ
それはまた 盧溝橋 ノモンハンへと通ずる道だ
それはまた ヒロシマ・ナガサキへと通ずる道だ
狼の赤ズキンやペテンに だまされてはならない
あいつの隠した 牙や爪を 見抜かねばならない
もう 二度と 羊の群などになってはならない
敵の正体を見破って立ち上がるものこそ 人民だ
注* 「おしゃべり野郎」──彼の仲間のひとりが彼をこう呼んだのである
(『民主文学』1987年3月号、『冬の歌』)
◇ ◇ ◇
1985年、中曽根内閣が国会に提出した国家機密法(スパイ防止法)は世論の反対により廃案となった。天野祐吉が「国家機密法とは何か」と題する講演で「スパイ防止法はとおらなくても、自民党は手を替え品を替えてくる、日本を軍事大国にしていく動きだ」と話した(信濃毎日新聞コラム「斜面」10月26日)。その通りのことを今回、安倍政権は秘密保護法の提出で企てている。「風刺の季節」が再来した。
──ふたたび「国家機密法」に反対する
いま 怒りがこの列島に 渦巻くとき
詩人にとって それは 風刺の季節だ
あくどい敵の悪業悪政に 風刺の羽根をつけて
みんなの眼に見えるように 飛ばしてやるときだ
詩は 神秘や永遠を 風や影をうたうものだ
政治や風刺をもちこむな 花園を荒らすな
そんな 屋根のうえの夢遊病者のうわごとや
芸術至上主義者の禁制(タブー)を ぶち破るときだ
アラウカニアの 石つぶてのような 風刺を
ファシストどもに投げつけたネルーダのように
黒い怪物どもの正体を 白日の下にあばき出し
歴史の壁にさらし はりつけにしてやるときだ
とりわけ テレビのブラウン管に姿を現わすや
みんなにスリッパでひっぱたかれる あいつを
あいつは うそとペテンで ひとをだまくらかし
三〇四の席をかすめとって おごりたかぶり
あのおしゃべり野郎*は みずから本音を吐きちらし
その黒い手の内を 世界のまえにさらけ出す
アメリカには 黒い羊や褐色の羊がいるから
知的水準は やはり比較的に 低いものだ・・・
おれたちは黄色いが 単一民族で 優秀だ
優秀な狼は そこらの羊を食う権利がある・・・
つい あのヒットラー狼の口まねが出てしまう
それが 舌足らずの 失言などであるものか
そうしてあいつは 腹黒い野望をおし通すために
でっかい網を 人民の上に掛けようというのだ
勝手放題にふるまって 反対する奴をひっ捕らえよう
狼が 森のなかに罠をしかけようというのだ
また 犬どもが 嗅ぎまわりうろつきまわり
とつぜん 家のまえに自動車(くるま)がとまったり
でくの坊や棍棒や ピストルをのさばらせて
国じゅうを牢獄に 地獄に変えようというのだ
もしも 日本の国家が あいつの言うような
まやかしのアイデンティティなどをもつなら
人民のひとりひとりが 生きた人間としての
真のアイデンティティを奪いとられるだろう
そうして「象徴」をまた 神にまつりあげて
子供だましの神話や不条理に土下座させて
またしても 春の蕾のような 若者たちを
戦争へ 核戦争へ 駆り出そうというのだ
海の向うの虎の威にすりよって 手先となって
核戦略やSDIのお先棒をかつごうというのだ
あいつらには 悪知恵はあっても 理性がない
利権や利潤に眼がくらんで 未来が見えない
盲目の狼が 目かくしした羊の群を駆って
ふたたび 奈落の闇へ 急ごうというのだ
それはまた 盧溝橋 ノモンハンへと通ずる道だ
それはまた ヒロシマ・ナガサキへと通ずる道だ
狼の赤ズキンやペテンに だまされてはならない
あいつの隠した 牙や爪を 見抜かねばならない
もう 二度と 羊の群などになってはならない
敵の正体を見破って立ち上がるものこそ 人民だ
注* 「おしゃべり野郎」──彼の仲間のひとりが彼をこう呼んだのである
(『民主文学』1987年3月号、『冬の歌』)
◇ ◇ ◇
1985年、中曽根内閣が国会に提出した国家機密法(スパイ防止法)は世論の反対により廃案となった。天野祐吉が「国家機密法とは何か」と題する講演で「スパイ防止法はとおらなくても、自民党は手を替え品を替えてくる、日本を軍事大国にしていく動きだ」と話した(信濃毎日新聞コラム「斜面」10月26日)。その通りのことを今回、安倍政権は秘密保護法の提出で企てている。「風刺の季節」が再来した。
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