おれの言葉をよくおぼえておけ  トー・フー

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 おれの言葉をよくおぼえておけ
                    トー・フ一/大島博光訳

新しい歴史をつくりだすような瞬間がある
永遠に人の心に生きつづける死者たちがいる
どんな歌ごえよりも美しい叫びがある
「真実」から生まれてきたような人たちがいる

おお 同志グエン・バン・チョイよ
きみのいのちは息絶えたが きみの魂は
いつまでも 人民の胸に生きつづけるだろう
きみの生も死も 雄々しく 偉大だった

同志よ きみは永遠にくちびるをとざしたが
きみの叫びは いまも鳴りひびいている
「おれの言葉をよくおぼえておけ!」と
そしてきみの眼の光りは党紙に輝やいている

きのうという日は永遠に忘れられないだろう
あの秋の日の朝 チ・ホアの刑場のなかを
きみは 両側を二人の獄卒にはさまれて
教誨師をうしろにしたがえて 進んでいく

きみの傷ついた両足は 痛みによろめく
しかし きみは昂然と頭を上げてすすむ
きみがまとった白衣は 純潔の色そのもの
きみのひよわなからだが 死にもひるまない

死刑執行人の一隊と 新聞記者の一団とが
陰欝な二列横隊をつくっていた──着け剣で
きみは静かに歩をはこぶ 澄んだ眼ざしで
まるで 裁くのは きみであるかのように

きみの踏む足うらに 草の葉はみずみずしい
いのちはいつも このみどりの色をしているのだ
そこに 解放をもとめる きみの大地がある
そこに 生をもとめる きみの肉と血がある

きみは強く叫ぶ「おれがどんな罪を犯したというのか」
きみは 処刑柱に綱でしばりつけられる
狙いをつける十挺の銃 きみには黒い目かくし
きみは声を限りに叫ぶ「罪を犯したのはヤンキーどもだ!」

きみは さっと 目かくしをかなぐり捨てる
きみは 卑怯者どもをじっとにらみすえる
死をも きみは面と向って見とどけようとする
何ものも消すことのできない燃える火のような眼で

やつらはふるえあがって つなをきつくしめ直す
きみのくちびるは憎しみに燃えて かわく
共産主義者らしく堂どうとたたかおう
けだかい心が銃弾など恐れてなるものか

命令がくだされた「第一列 おりしけ!」
きみは叫んだ「おれの言葉をよく覚えておけ!
アメリカ帝国主義を打倒せよ!
グエン・カンを打倒せよ!
ホー・チ・ミン 万才!
ホー・チ・ミン 万才!
ホー・チ・ミン 万才!
この最後の瞬間にきみはわれらの「ホーおじ」の名を三回よんだ

一斉射撃で アメリカ製の十発の銃弾がとぶ
きみは倒れ も一ど立ちあがろうとする
きみはも一ど叫ぶ「ベトナム万才!」
血は心臓からあふれ出て大地を赤く染め そこにきみは横たわる

うめき声ひとつあげず きみは眼をとじた
きみは死んだ 静かに眠る仏像のように
教誨憎がきみのそばに投げてよこした
あのブリキの十字架などなんになろう

同志チョイよ きみは死んだが 見たまえ
血は血をよぶのだ さっそく きみのために
カラカスの義勇兵たちは 首都のまんなかで
アメリカの将校を人質にとらえたのだ

きみは死んでしまった きみにはもう見えないが
火は火をよんで 南ベトナムじゅうが火の海だ
きみのこころのような火で──おお たぐいまれな火よ
きみが息をひきとるとき 流星が光りかがやいた・・・

おれの言葉をよくおぼえておけ!
おお 同志 グエン・バン・チョイよ
そうだ きみの遺言をおれたちはおぼえておこう
敵をまえにして 恐れおののかず
おれたちは栄光のなかに生き 栄光のなかに死ぬのだ
祖国のためにおれたちみずからをささげるのだ
電気労働者 グエン・バン・チョイのように

(『ベトナム詩集』飯塚書店 1974年)

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