『ピノチェト・ノー』勝利の前夜 現地からのレポート(上)The previous night of the victory of "Pinochet no"

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『ピノチェト・ノー』勝利の前夜 現地からのレポート
                               美原伴平

 去る十月五日の国民投票で「ノー」が勝利し、ピノチェトは国民の多数から不信任されました。チリの民主化への歩みは大きく前進しました。国民投票直前のチリの様子を、最近までチリに滞在されていた美原伴平氏に報告してもらいました。

ノーの勝利

国民投票直前のチリの気運

 九月十日、七三年のクーデター以降はじめて大規模な左派系合同集会がサンチアゴ南部のラ・パンデーラ公園で開かれた。公園といっても、同名のポブラシオン【低所得者層の居住地区】の北端に広がった、いわば空き地だ。ポブラシオンの中から、そして外から、各政党の旗、虹の絵とNOの文字の書かれた旗、チリの国旗を掲げた人々が何十人、何百人の群となって力強く進んでくる。
 公園の南西に位置する区役所の中に、その前を通る「反体制分子」の写真を撮る職員の姿が見られた。しかし、住民はもう抑圧を恐れてはいないようだ。反政府勢力の合い言葉、「チリ、もう喜びがやって来る」を唱いながら歩いてきた若者グループの中の一人の女の子が、わざわざそちらの方を向いて「こっちこっち」と叫びつつⅤサインを向ける姿が印象的であった。
 バスでやって来る者、自動車でやって来る者が、「イ・バ・ア・カエール(もう倒れるぞ)」のリズムで、パパッパパーとクラクションを鳴らす。道を行く者が、にっこり笑ってこぶしを振り上げ、これに応える。それは、自分たちの共通の闘いによって必ずよりよい社会をかち取るのだという』決意を確認しあうかのようであった。
 公園には、共産党、社会党、キリスト教左派、急進党など、さまざまな旗がひらめく。アジェンデ大統領の顔を描いた垂れ幕も見える。住民の話では、中道のキリスト教民主党のグループもいたという。一方、武装闘争路線のMIRの若者たちも、公園に面した四階建てのアパートの屋上にのぼり、へりをドンドコ・ドンドコと叩きながら、さかんに気勢をあげていた。他の参加者たちも、そちらの方をみては「うん、やっとるな」といわんばかりにニヤッとしている。若者のグループ、男女のカップル、子供や赤ん坊をかかえた家族連れ、老人など、実にさまざまな年令の人々が見られた。
 さて、集会の内容も、各党の代表者の演説の他、「自由よ、お前の名を呼ぶ」を歌ったイサベル・アルドゥナテ、詩を朗読したケレンタロ、ロックグループのロス・プリシネオー口スの演奏などバラエティに富んでいた。舞台の下には、ポブラシオンの子供たちに囲まれて歌うビクトル・ハラを描いた垂れ幕が下がっている。
 集まった者も、ただ黙って聴いているだけではない。演説や歌の合い間に、「イ・バ・ア・カエール」と叫ぶもの、「エル・ケ・ノ・サルタ・エス・ピノチェ (跳ねないやつはピノチェ)」と言いながらピョンピョンと跳ねるものもいる。それにつられて、同心円状にピョンピョン跳ねる者の輪が広がっていく。「ノー」と書いた色とりどりの凧を天高く揚げるもの、プラスチック製の安価なラッパを口に当て、「イ・パ・ア・カエール」のリズムでププッブプーと吹く者の姿もあちこちに見える。政党の機関紙を売るもの、「ノー・アスタ・ベンセール(勝利するまでノーを)」と書かれた小旗やはちまきを売るもの、アイスクリームや一本売りのたばこを売って回るものもいる。街の建物や塀に壁画を描く共産党系のラモーナ・パラ隊のカンパを集めて回る若者もいる。
 ポスターを売っていたので近くに寄ってみると、思わず笑ってしまった。そこには、セクシーな若い女性が「ノー」にちなんださまざまな言葉を語る姿がえがかれていた。医者の前で「先生、もう喜びがやって来るわ」というビキニ姿の女性、エレベーターの中でその気になっている中年紳士に向かって「アキ・ノー(ここじゃダメ)」という超ミニのエレベーター・ガール……。さまざまな形で弾圧を受けながらけっしてユーモアを忘れない、ここにチリ反政府勢力のしたたかさを感じた。
 集会は大成功で、数万人もの人々が集まった。「ノー」が多数派であることを確信し、気勢をあげつつ、夕暮れのアメリゴ・ベスプシオ通りを通って、あるいはポブラシオンの中に帰っていった。
 
(つづく)

(『チリ人民連帯ニュース』33号 1988.12.20)
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