ミゲル・リティン監督は語る

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ミゲル・リティン監督は語る

ミゲル・リティンが 日本へやってきた
頬ひげを生やして ノー・ネクタイで
血ぬられた サンティアゴの映像をかかえて
不屈な チリ人民の雄叫びをたずさえて

彼は語る いのちがけで くぐってきた
鉄と火の 闘いのなかからの熱い言葉で
彼は語る わたしは 映画監督だから
フィルムで チリ人民に奉仕したかった

亡命の身のわたしは ひげをそり落として
まゆを削り 花模様のネクタイを結んで
ウルグワイの ブルジョア紳士に化けて
自分の生まれた祖国チリに もぐりこんだ

いま わたしの祖国は 微笑みのない国
街の子供たちさえ 笑いを忘れてしまった
人間らしい暮らしを──と叫んだだけで
とつぜん ひとびとが行方不明になる国

川に投げこまれ 海に捨てられた死者たち
墓も花束もとむらいもない 死者たちの国
愛する息子 夫 恋人を 奪いとられた
女たちが 堂々と 兵隊たちに詰めよる国

アジェンデの時代は 自由で幸せだった
畑は分配され 子供たちにはミルクが流れた
いま 銅も硝石も外国の手に牛耳られて
大地の富が 人民を貧困につき落とすのだ

彼は語る 今にも倒れんばかりの独裁者を
うしろから支えているのは だれなのか
アタカマ砂漠の豹が 兎たちを食いちぎり
アナコンダが 羊たちを丸呑みにするのだ

だが 風のそよぎにも ゆらぐ影にさえも
おびえおののくのは ピノチェットなのだ
死んだはずのアジェンデやネルーダの影が
いまも いたるところを徘徊しているのだ

いくら モネダ宮の白壁を塗りかえようと
あのアジェンデの偉大な声は こだまする
「わたしは人民の委託を守ってここにいる
歴史をつくるのは人民だ チリ人民万歳!」

まるで 死んだネルーダを縛るかのように
イスラ・ネグラの詩人の家を柵で囲んでも
若者たちはやってきて その胸に刻んでゆく
詩人のメッセージを あの愛と自由の歌を

そしてチリ人民は闘うすべを知っている
苔は岩にかみつき 錆は鉄をもくらうのだ
きくがいい あたらしい春を迎えようと
サンティアゴの広場を埋めた 人民の雄叫びを

 注* アナコンダ──この南米産の大蛇の名前を社名とした、アメリカの多国籍企業「アナコンダ社」はチリの銅山を支離している。

(『冬の歌』、『赤旗』一九八七年九月三〇日)
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