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ネルーダ『大いなる歌』1. 地上のランプ(1)アステカ

ここでは、「ネルーダ『大いなる歌』1. 地上のランプ(1)アステカ」 に関する記事を紹介しています。
 アステカ

 第一章『地上のランプ』の「人間たち」という詩は、古代および中世の南アメリカの諸部族について書いている。そのなかでアステカ文明についてはこう歌われている。

 アステカの階段を
 目にもまばゆい 雉子の群のように
 神官たちが しずしずと降りてきた
 ・・・ 断末魔の呻きと風のなか
 石に石を積み重ねた 荘厳なピラミッドは
 威圧的なその体積のなかに
 犠牲(いけにえ)の心臓を 巴旦杏のように閉じこめた
 わめき声にも似た 雷鳴のなか
 血は 神聖な階段をしたたり落ちた

 ここには、アステカにおける宗教的儀式の豪奢なきらびやかさとピラミッド神殿の壮大さが歌われていると同時に、その専制的な権力の強大さと犠牲(いけにえ)を捧げる宗教的な残酷さがあばかれている。アステカ王国は盲目的な神権政治と血なまぐさい蒙昧主義のうえに成り立っていた。巨大な神殿をきずいた建築家たちのすばらしい芸術も、迷信による圧制を正当化することはできない。
 このアステカの圧制にたいして、ネルーダは、名もない多くの部族民たちのつつましやかで平和を日常生活を──その農耕や手仕事などを対置している。

 けれども もろもろの部族の人民は
 繊維を織り 収穫(とりいれ)のために精を出し
 色もまばゆい羽根を織り トルコ玉を磨き
 そして 織物の模様のなかに
 この世の光を 織り出した

 ここには、素朴な人民の活気と活力にみちた労働の姿が描かれている。そして彼らの作りだした物の美を──「この世の光」をうたっている。

(『パブロ・ネルーダ』──『大いなる歌』)
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