アルピジェーラの普及を──チリからの手紙(『チリ人民連帯ニュース』)

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アルピジェーラの普及を──チリからの手紙

 親愛なる友人の皆様へ
 我が国における政治変革と間近に迫った民主主義の到来を機に、私どものプログラムが支えている【人権擁護組織ビカリア・デ・ラ・ソリダリダ】のアトリエの将来と、私どもの事業の継続について数限りない意見が、私どもに寄せられて参りました。
 目下のところ、私どもはアトリエの全体が直面している現実と、その展望と希望、そして配給における顧問と援助という私どもの事業を継続すること、そうしたことなどについて、皆様方にお伝えしたいと思っております。

 政治囚たちのアトリエ

 現在チリには軍事政権が「破壊囚」と呼ぶ約四六〇名の政治囚が存在しております。
 パトリシオ=エイルウィン氏の政府綱領によれば、殺傷事件を犯さなかったこの囚人たちの釈放が、彼等に法上の責任からの免責が宣告されることで行われるでしょう。また他の囚人たちには、彼等の訴訟行為が、弁護に対する当然な権利をもって正しい理性の判断に服するために、軍事法廷から民事法廷へと移されることでしょう。
 しかし上述の綱領を実行に移すことができるには、行政府の意思だけでは十分ではありません。刑法上の責任の免責を宣告し、また訴訟行為を軍事法廷から民事法廷へ移すためには、国会による法律の制定が必要とされています。しかし将来の政府は上院において必要な多数を持たないのですから、法律の制定をやり遂げるためには右翼諸政党との協定が必要とされるでしょう。
 実際のところ、大統領が彼の意思だけで、免責し釈放できるのは高々四〇名程度の政治囚に過ぎないでしょう。残り全ての政治囚たちは、上に述べました法律の制定を待たされざるを得ないでしょう。
 従って、政治囚の問題の解決は容易には達成されないだろうし、彼等の多くはなおかなりの期間にわたって釈放されずにいるだろうということができます。
 それゆえに、彼等の就業を維持し、政治囚自身と彼等の家族の生計維持に欠くことのできない経済的収入を得ることが出来るように、彼等のアトリエを支え続けることが必要となるでしょう。

 民衆組織のアトリエ

 民衆組織のアトリエを形作るものは、【ポブラシオンという】社会経済的な意味での周縁地域のほとんど全体にあてはまるものです。
 この現実は民主主義の到来によってたちまち変わるというものではありません。周縁地域には、開発計画の速やかな達成を困難にする、極めて深い構造的文化的な諸要因があるのですから、経済上の変化を利用し利益を得ることでは、周縁地域はおそらくその最後の地域となるでしょう。いい添えねばならないのは、独裁の結果としてこうした開発計画のための国民的前提条件もまた存在しないということです。
 アトリエは全て作業を続けることが必要です。働くこと、そして収入が必要です。その上、【アトリエで働く人々】が欲しているのはその手工芸で働くことです。それはこの歳月のうちに彼等が習い覚えた仕事であり、彼等はそれを誇りに思っているのです。
 例えば、アルピジェーラを作る女性たちは、自分たちのアルピジェーラに刺繍をし続けたいと思っているのです。「彼女たちからアルピジェーラのテーマが尽きることはなかった」とお考えになる方もあるでしょう。その通りです。それどころか、貧しい人々の間では、生活を求める闘い、それは一つの尽きることのない歴史なのです。そこには「固有の生活」があるのであり、それは独裁に対する「反応」というのでは、到底語り尽くせないものなのです。この歳月の間、アルピジェーラもまたそのことを物語っています。生き抜くための千ものちっぽけな手仕事、周縁へ追いやられることから抜け出すための民衆の諸組織、子供たちの遊びと無邪気な喜び、貧しい人々の連帯、民衆の『宗教性、女性の闘い、周縁のポプラシオンの花々、などなど。
 こうしたことや他の多くのことは、アルピジェーラを作る女性たちが物語ろうとする現実であるでしょう。疑いもなく社会には重要な新しい出来事が引き続き起こるに違いありません。独裁に対して彼女たちが初めて描きだしたのですから、同じように、おそらく彼女たちが最初に新しい出来事を、彼女たちがもっとも心を動かされるテーマを独自に選び出すことで、描きあげることでしょう。
 アトリエを形作っていることの全ては、さらにアトリエをまとめている民衆の諸組織にもあてはまることです。アトリエはその組織を非常に高く評価しています。こうした連合体を活動させ永続させるには、並みはずれた努力が注がれているのです。多くの涙や危険そして犠牲が注がれているのです。どうして解散することができましょうか。何によってこの共同の活動と仕事を置き換えることができるのでしょうか。
 こうした理由から、ビカリア・デ・ラ・ソリダリダのアトリエ援助のプログラムは現在あるアトリエに対してその業務をつづけるでしょうし、より広範な自由と協力という環境において、私どもの仕事を最も必要と人々のため、その仕事の強化と拡大を模索していくことでしょう。
 引き続き皆様方のこの上なき協力を期待しうることを希望しつつ、心から、友人としての挨拶を送ります。
                   ウィイニー・リラ
                   アトリエ連合部長

チリ連ニュース

(『チリ人民連帯ニュース』第37号 1990年4月10日)

(注1)1989年12月の大統領選挙で反軍政の統一候補エイルウィンが勝利し、1990年3月にエイルウィン政権が発足、16年に及ぶチリのピノチェト軍政は幕を閉じた。

(注2)ビカリア・デ・ラ・ソリダリダ Vicaria de la Solidaridad (連帯ビカリア):ピノチェトの軍事独裁による被害者を援助・救済するためにチリのカトリック教会が創設した人権組織。食事の無料提供、失業者のための作業所や職業紹介所の設置などをした。また、独裁政権下の人権侵害の事例を掘り起こし,その家族に法律面での援助を与えた。1976年1月〜1992年12月まで活動した。
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