おふくろよ

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 おふくろよ
                   卜ー・フー

息子がこん夜も遠くでおふくろを案じていると
だれか 村にかえるものはおふくろに伝えてくれ

きり雨の山から 冷めたい風が吹きおろす
おふくろさんよ 寒くはないか

おふくろは 寒さにふるえながら田植えだ
足は泥田のなか 手は苗を植える

おふくろは一本いっぽん苗を植えていく
そして植えるたんびに 息子のことを考える

きり雨は おふくろのぼろ着をぬらして降る
そのしたたりほどに おれはおふくろを思う

いとしいおふくろよ どうか朝も 晩も
おれのことを心配しないでおくれ

おれはたくさんの山や川を越えていく
それもおふくろの苦労ほどつらくはない

おふくろのつらいみじめな六十年にくらべれば
ものの数ではない おれは十年でも戦う

おふくろよ おれは遠い前線へ出ていく
もうひとりのおふくろのようにおれは祖国を愛する

おふくろよ どうかおれのことは心配せずに
戦う息子のおふくろでいておくれ

おれは遠くへ行っても 近所のようなもの
戦うたくさんの仲間がそばにいるのだから

おふくろよ おれたちは血でむすぼれている
母も息子も おんなじ祖国の子なのだ

ひと足ごとに おれは戦争に出っくわす
しかしどこででもあんたのようなおふくろに出会う

自分の息子のようによく面倒をみてくれる
火をたき 服をつくろい 寝床をつくってくれる

遠くへいくあんたの息子はもう大きくなって
ただ おふくろが息子を案じるのが気がかりだ

おふくろよ おれを思っても悲しまないでおくれ
敵を迫っぱらって おれはきっともどってくる

髪に霜をおいたおふくろさんは 夕ぐれ
子の声をじっと身うちにきいていた

(「ベトナム詩集」飯塚書店 1968年)
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