博光が「抵抗詩について」を講演した上田での「戦争に反対する詩人の会」の様子を長田三郎氏が詳しく書いています。
◇ ◇ ◇
・・・上田城址公園の新緑がむせかえるような芳香を放っている一九八四年六月十日の午後、市民会館講堂で第四回「反戦・詩人と市民のつどい」が開かれた。地元長野県をはじめとして、東京・水戸・静岡・京都など各地から駆けつけた詩人と市民たち百六十余名で埋まった会場は、静粛ではあったが溢れるような熱気に包まれていた。会場設定と進行を小崎軍司氏が担当して「開会のことば」を述べ、前長野県詩人協会会長の松本隆晴氏が「歓迎のことば」を述べ、松村好助氏の司会でプログラムが進められた。
富士見出身で創価大学教授の三井為友氏は、特別講演「現代日本における反戦詩の役割」の中で、北ボルネオの戦線で六〇〇キロの死の行進に参加した自らの戦争体験を回想し、信州には馴染み深い尾崎喜八の戦争中の作品に触れて、前の戦争に対する痛切な反省から出発しなくてはならないこと、日本全土が焦土と化するかも知れない今日の切迫した事態の中で、戦争を食い止めるためにすべての詩人が叫ばなくてはならないと訴えられた。元家裁判事で弁護士の森田宗一氏は「反戦平和への行脚の旅」と題して、アメリカ大陸横断の平和大行進に参加し、ガンジーやタゴールの息吹を求めてガンジス河のほとりを巡礼した行脚の旅を回顧し、アメリカインディアンの聖地でウラニウムを掘らせないために反戦平和の闘士として立ち上がった詩人ジョン・トゥルーデルの作品を紹介され、その朗読が録音テープで会場に流された。
長谷川龍生氏は「戦争と人間」と題して、明治以後の流行歌における音階変遷の歴史を辿り、小泉文夫の著書に触れて、演歌師が歌う流行歌の中に人々が気づかないうちに軍国調が復活する危険性を指摘された。大島博光氏は「抵抗詩について」と題して、戦争中『蝋人形』誌にロシア十月革命を讃えたアラゴンの訳詩をローマ字で載せたことを回顧し、アラゴン、エリュアールらのランボー、ユゴー観を取り上げてフランスの抵抗詩の歴史を紹介しつつ、反戦詩への自らの姿勢を表明された。
小崎軍司氏は「上田自由大学運動の今日的意義」と題して、「一九二一年に開設され、土田香村、高倉輝、三木清、安田徳太郎らを講師として迎えた輝かしい伝統をもつ上田自由大学が、十五年戦争突入とともに跡絶え、受講者たちも体制に協力していった歴史を辿り、日本が核戦略基地になろうとしている今日、時流に迎合せず核戦争を食い止めていきたいと訴えられた。藤原定氏は「戦争と民主主義」と題して、民意は反映されず天皇の統帥権だけが強調された前の戦争を回顧して、戦争になれば民主主義はかならず崩壊すると力説された。増岡敏和氏は「峠三吉と原爆詩集」と題して、朝鮮戦争の最中に峠三吉を中心に反戦詩集『われらの詩』を発行した当時の回想を、広島でいっしょにサークル活動をした仲間のひとりとして話された。
作品を朗読した十一名のうち長野県からは、諏訪の西川博彬氏、松本の赤羽恒弘氏、佐久の新津利通氏、戸隠の和田攻氏、川中島の浜田順二氏、地元上田の山崎庸子さん、松村好助氏、県外からの参加者では、矢野克子、笠原三津子、岩本敏夫、丸地守の諸氏が、それぞれ自作の詩を全身の力を込めて朗読した。長田三郎は「閉会のことば」の中で、松本連隊を描いた自作の詩を朗読した。(以下略)
(長田三郎「戦争に反対する詩人の会──長野県における運動の軌跡」『長野県現代詩史』かおすの会発行)
◇ ◇ ◇
この集会が全国規模のもので、活況を呈し内容も大変充実していたこと、多数の長野県の詩人たちが協力したこと、松本隆晴が前長野県詩人協会会長として「歓迎のことば」を述べたことがわかりました。
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・・・上田城址公園の新緑がむせかえるような芳香を放っている一九八四年六月十日の午後、市民会館講堂で第四回「反戦・詩人と市民のつどい」が開かれた。地元長野県をはじめとして、東京・水戸・静岡・京都など各地から駆けつけた詩人と市民たち百六十余名で埋まった会場は、静粛ではあったが溢れるような熱気に包まれていた。会場設定と進行を小崎軍司氏が担当して「開会のことば」を述べ、前長野県詩人協会会長の松本隆晴氏が「歓迎のことば」を述べ、松村好助氏の司会でプログラムが進められた。
富士見出身で創価大学教授の三井為友氏は、特別講演「現代日本における反戦詩の役割」の中で、北ボルネオの戦線で六〇〇キロの死の行進に参加した自らの戦争体験を回想し、信州には馴染み深い尾崎喜八の戦争中の作品に触れて、前の戦争に対する痛切な反省から出発しなくてはならないこと、日本全土が焦土と化するかも知れない今日の切迫した事態の中で、戦争を食い止めるためにすべての詩人が叫ばなくてはならないと訴えられた。元家裁判事で弁護士の森田宗一氏は「反戦平和への行脚の旅」と題して、アメリカ大陸横断の平和大行進に参加し、ガンジーやタゴールの息吹を求めてガンジス河のほとりを巡礼した行脚の旅を回顧し、アメリカインディアンの聖地でウラニウムを掘らせないために反戦平和の闘士として立ち上がった詩人ジョン・トゥルーデルの作品を紹介され、その朗読が録音テープで会場に流された。
長谷川龍生氏は「戦争と人間」と題して、明治以後の流行歌における音階変遷の歴史を辿り、小泉文夫の著書に触れて、演歌師が歌う流行歌の中に人々が気づかないうちに軍国調が復活する危険性を指摘された。大島博光氏は「抵抗詩について」と題して、戦争中『蝋人形』誌にロシア十月革命を讃えたアラゴンの訳詩をローマ字で載せたことを回顧し、アラゴン、エリュアールらのランボー、ユゴー観を取り上げてフランスの抵抗詩の歴史を紹介しつつ、反戦詩への自らの姿勢を表明された。
小崎軍司氏は「上田自由大学運動の今日的意義」と題して、「一九二一年に開設され、土田香村、高倉輝、三木清、安田徳太郎らを講師として迎えた輝かしい伝統をもつ上田自由大学が、十五年戦争突入とともに跡絶え、受講者たちも体制に協力していった歴史を辿り、日本が核戦略基地になろうとしている今日、時流に迎合せず核戦争を食い止めていきたいと訴えられた。藤原定氏は「戦争と民主主義」と題して、民意は反映されず天皇の統帥権だけが強調された前の戦争を回顧して、戦争になれば民主主義はかならず崩壊すると力説された。増岡敏和氏は「峠三吉と原爆詩集」と題して、朝鮮戦争の最中に峠三吉を中心に反戦詩集『われらの詩』を発行した当時の回想を、広島でいっしょにサークル活動をした仲間のひとりとして話された。
作品を朗読した十一名のうち長野県からは、諏訪の西川博彬氏、松本の赤羽恒弘氏、佐久の新津利通氏、戸隠の和田攻氏、川中島の浜田順二氏、地元上田の山崎庸子さん、松村好助氏、県外からの参加者では、矢野克子、笠原三津子、岩本敏夫、丸地守の諸氏が、それぞれ自作の詩を全身の力を込めて朗読した。長田三郎は「閉会のことば」の中で、松本連隊を描いた自作の詩を朗読した。(以下略)
(長田三郎「戦争に反対する詩人の会──長野県における運動の軌跡」『長野県現代詩史』かおすの会発行)
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この集会が全国規模のもので、活況を呈し内容も大変充実していたこと、多数の長野県の詩人たちが協力したこと、松本隆晴が前長野県詩人協会会長として「歓迎のことば」を述べたことがわかりました。
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