ルイス・カルロス・プレステス
ポール・エリュアール/大島博光訳
わたしが 見知らぬよそぐにへ行くと
ひとびとと 樹々は 幽霊のようだ
雲のない空も ひとつの悪夢のうえにかかった丸天井だ
けれども この原始林のなかで
何ものもわたしのよいものを奪いはしない
あかつきの妖怪も
息苦しい夜の怪物も
アウシュビッツで 根を下ろした
ぞっとするような恐ろしい悲痛さも
何ものも わが愛する祖国 ブラジルを
わたしから奪いとることはできぬ
ブラジルのわが兄弟たちは わたしをもとめている
なぜなら兄弟たちは 見たのだから
たくさんの生活が流れてから 書きとめられてきた
あの悲しみ わたしの苦しみを
じぶんたちの 食うや食わずのみじめな生活を
わたしが すべてのひとたちのうちの ひとりにすぎなかろうと
せめてわたしが すべてのひとを信頼しているということを みんなに示したいものだ
みんな めいめいに 永遠の太陽がある
わたしは くらやみや不義不正をゆるせない
わたしに光リをさししめしてくれたのは人民だ
人民は 敗北のどん底でこそ 光りが必要なのだ
わたしは すばらしい生活をめざして
くずおれない人間たろうと つとめてきた
やすみなく前進しながら わたしはみんなの希望をよせあつめる
あんまりたくさんの兄弟たちが 世界にいるので
わたしはもう二どと 孤独にはなれぬだろう
わたしはみんなの力を結びつけ 結びつけるようにと みんなに呼びかける
その力の流れをわれわれは みちびくことができるだろう
勝利から その目的地へと
わたしの祖国では 森は
木によどみかかる斧よりも強い
わたしは祖国にふみとどまって 斧をすりへらしてやる こき使ってやる
斧がうち倒れるまで
わたしの祖国は わたしの力 わたしをひとびとにむすびつける
祖国は 人民のもの わたしのもの
やがてわたしたちは 祖国をわがものとするだろう
わたしの心のなかに脈うっているたくさんの心を
きょう うちくだきうるものは何もない
わたしたちは みんな同じ道をゆく
石ころと いばらの道を
しかし 大地をふむわれらの足どりは たのしく
太陽を仰ぐ われらの頭は やさしい
ブラジルのほの暗い奥処(おくが)から
わたしは 黒いベールをはぎとり
いたるところに 光りをまく
わたしは かたい希望をもったものだ
わたしは 愚行の召使ったいを怒りに駆りたて
エゴイズムの否定をおしすすめるものだ
わたしは しあわせを かちとりたい
わたしは すべての扉をひらきたい
わたしの希望は 世界をかけめぐる
いたるところから たくさんの声がわたしに答える
みじめさは あとじさりする
わたしは前進し いたるところ 素手で用意するのだ
きょうの日の苗床を
あすの日の とりいれを
*訳注 ルイス・カルロス・プレスレスはブラジル共産党の書記長
<『エリュアール詩選』1956年>
*プレステスの妻オルガ(ユダヤ系ドイツ人)はナチス・ドイツに引き渡され、アウシュビッツ収容所で殺されています。ブラジル映画『Olga オルガ』(2004年)で映画化されているそうです。
ポール・エリュアール/大島博光訳
わたしが 見知らぬよそぐにへ行くと
ひとびとと 樹々は 幽霊のようだ
雲のない空も ひとつの悪夢のうえにかかった丸天井だ
けれども この原始林のなかで
何ものもわたしのよいものを奪いはしない
あかつきの妖怪も
息苦しい夜の怪物も
アウシュビッツで 根を下ろした
ぞっとするような恐ろしい悲痛さも
何ものも わが愛する祖国 ブラジルを
わたしから奪いとることはできぬ
ブラジルのわが兄弟たちは わたしをもとめている
なぜなら兄弟たちは 見たのだから
たくさんの生活が流れてから 書きとめられてきた
あの悲しみ わたしの苦しみを
じぶんたちの 食うや食わずのみじめな生活を
わたしが すべてのひとたちのうちの ひとりにすぎなかろうと
せめてわたしが すべてのひとを信頼しているということを みんなに示したいものだ
みんな めいめいに 永遠の太陽がある
わたしは くらやみや不義不正をゆるせない
わたしに光リをさししめしてくれたのは人民だ
人民は 敗北のどん底でこそ 光りが必要なのだ
わたしは すばらしい生活をめざして
くずおれない人間たろうと つとめてきた
やすみなく前進しながら わたしはみんなの希望をよせあつめる
あんまりたくさんの兄弟たちが 世界にいるので
わたしはもう二どと 孤独にはなれぬだろう
わたしはみんなの力を結びつけ 結びつけるようにと みんなに呼びかける
その力の流れをわれわれは みちびくことができるだろう
勝利から その目的地へと
わたしの祖国では 森は
木によどみかかる斧よりも強い
わたしは祖国にふみとどまって 斧をすりへらしてやる こき使ってやる
斧がうち倒れるまで
わたしの祖国は わたしの力 わたしをひとびとにむすびつける
祖国は 人民のもの わたしのもの
やがてわたしたちは 祖国をわがものとするだろう
わたしの心のなかに脈うっているたくさんの心を
きょう うちくだきうるものは何もない
わたしたちは みんな同じ道をゆく
石ころと いばらの道を
しかし 大地をふむわれらの足どりは たのしく
太陽を仰ぐ われらの頭は やさしい
ブラジルのほの暗い奥処(おくが)から
わたしは 黒いベールをはぎとり
いたるところに 光りをまく
わたしは かたい希望をもったものだ
わたしは 愚行の召使ったいを怒りに駆りたて
エゴイズムの否定をおしすすめるものだ
わたしは しあわせを かちとりたい
わたしは すべての扉をひらきたい
わたしの希望は 世界をかけめぐる
いたるところから たくさんの声がわたしに答える
みじめさは あとじさりする
わたしは前進し いたるところ 素手で用意するのだ
きょうの日の苗床を
あすの日の とりいれを
*訳注 ルイス・カルロス・プレスレスはブラジル共産党の書記長
<『エリュアール詩選』1956年>
*プレステスの妻オルガ(ユダヤ系ドイツ人)はナチス・ドイツに引き渡され、アウシュビッツ収容所で殺されています。ブラジル映画『Olga オルガ』(2004年)で映画化されているそうです。
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