アラゴン「わたしは歌う 時をつぶすために」

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 わたしは歌う 時をつぶすために
                        ルイ・アラゴン

わたしは歌う 時をつぶすために
わが残りわずかな この世の時を
霧氷のうえに 楽書きするように
池のうえに 石を投げこんで
こころのうさを 晴らすように

わたしは歌う 時をつぶすために
わたしは すばらしい時代を生きた
おたがいに 思い出してもみよう
そして歳月の壁を 乗り越えてきた
かずかずの奇跡を 耳にして
いまの世はもう うって変った
わたしは すばらしい時代を生きた

さあ 握りしめた拳(こぶし)をゆるめよう
栄光から 額を解き放つように
われらはこの眼で 最初に見たのだった
地上ひくく 垂れこめた黒雲を
そうしてわれらの膝の上に 雲雀を
さあ 握りしめた拳を ゆるめよう

われらは闇の中で 月の光を作り出した
われらの宮殿と 銅像とを照らし出すため
いまでは もう殺されてもかまわぬ
暗闇は一つまた一つ 崩れ落ちよう
中国は コミューンになった
われらは闇の中で 月の光を作り出した

わたしはそれを いくどでも歌おう
あの頃は それほど冒険にみちていた
人間は 本来の偉大さを取りもどし
その声は鳴りひびいた 森を越え
山を越え海を越え 秘密をさえ越えて
わたしはそれを いくどでも歌おう

そうだ 時をつぶすためにわたしは歌う
ヴァイオリンの弓も すり切れる
水きり遊びの石も すり減ってゆく
そしてわが恋人は うっとりさせる
聞の中のわたしの方へ 身をかしげて
そうだ 時をつぶすためにわたしは歌う

わたしは歌いながら 時をつぶし
時をつぶすために わたしは歌う

(『未完の物語』)
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コメント
この記事へのコメント
詩人会議誌に先日の交流の事が載っており楽しく読ませて頂きました。
昨日テレビで千曲川の事が映っており懐かしかったですね~
2012/11/02(金) 07:43 | URL | 梅津 #-[ 編集]
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