ニコラス・ギジェンの詩三篇

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 ホ・チ・ミン

ながい旅の終わりに
静かに目覚める ホ・チ・ミン
そのまっ白な衣服に
自由なこころが 燃えあがる
護衛もつけずお付きもなしに
山を越え 荒野を渡ってきた人
もっているのは ただ
白い衣服のなかの 自由なこころ
その 旅のために
ほかには 何ももとめなかった

 *ホ・チ・ミンの死にささげる哀悼
               (訳・徳永三郎)


 おれは持ってる

おれが 自分を見つめ 自分にさわってみると
なんと きのうの文なし太郎のおれが
きょうはなんでも持ってる 物もち太郎だ
おれはぐるっと見まわして よく見る
自分を見つめ 自分にさわり
つぶやくのだ「どうしてこんなことになったのか」

もうちょっと見てみよう
おれは好きなように 国じゅうを歩きまわることができるし
国にあるものはなんでも自由にすることができる
むかしは近よることも持つこともできなかったものを
すぐ近くで手にとって見ることができる
おれは言うことができる──砂糖キビも
おれは言うことができる──山も
おれは言うことができる──町も
おれは言うことができる──軍隊も
みんなもう永久におれのものだ きみのものだ おれたちのものだと
そうして はてしなく輝く陽光も星も花も

もうちょっと見てみよう
おれは好きなように行くことができる
おれたち農民が 労働者が しがない人間が
好きなように行くことができる
(例えば)
銀行へ頭取と話をしに行くことができる
それも英語で話すのではなく
「旦那」呼ばわりで話すのでもなく
彼にスペイン語で「仲間よ(コンパニエロ」と言うことができる

もうちょつと見てみよう
おれが黒人であっても
ダンス・ホールや酒場(バー)へはいるのを
だれも止めることはできない
またホテルのフロントで 部屋なんかないと
だれもおれに怒鳴ることはできない
小さな部屋で 豪勢な部屋でなくとも
小さな部屋で おれは休むことができる

もうちょっと見てみよう
おれをひっ捕えて牢へぶち込んだり
おれを生まれ故郷から引っこぬいて
街頭のまんなかへ追いたてる
あの田舎のお巡りはもういない・・・

 *キューバ革命勝利の喜びをうたう
               (訳・大島博光)


 原 爆

これは爆弾です よく見て下さい
ただ今 すい眠中ですから どうかそっとしておいて
ステッキや棒で 竿や とがったものでつつかぬこと
投石を禁ず
餌の投入を禁ず
手と目に注意
 (掲示板にはこんな警告文があるのに誰も、大臣閣下も、無視している。
  この動物は
  危倹かつ狂暴なり)
               (訳・徳永三郎)

<『文化評論』1978年6月号>
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